35-1 おやつ抜き期間だけど
翌日の午前十時。
作戦会議室に、ロイたち三人と、エル、物資管理部のベルガモットが集まって、これからの打ち合わせを行った。
「今回の補給物資についてなんだが」ベルガモットが、タブレットに表示されているリストを見て「俺たちは宝石のことなんかまったくわからないから、クラリー夫人たちに検品してもらいたいんだ」
「いいんじゃないですか。管理も夫人たちにお願いして、使用数と在庫数を報告してもらう形式にすればいいと思いますよ」
「そうだな。検品のときは立ち合って、一緒に確認すればいいか」
「それで、プロジェクトのほうはどうなってますか?」
「順調だよ。ブランド名もマークも決まった。HPも立ち上げたし、大手のショッピングサイトにも出店したよ。商品も大分できたから、まずは、次に降りる星の店に売り込もうと、みんな張り切ってるよ」
楽しそうに話すので「そうですか。うまくいくといいな」
「まあ、評価するのは相手側だから、どうなるかわからないがね」
「初仕事か。なんか気合入るな」
「初心者だから、焦らずに行かないといけないよ」エルが話に入る。
「わかってるよ。何事も最初は勉強さ」
「向こうがどのくらいの評価を出すかによって、今後の方針が決まる。いい値を出してくれるといいんだがね」
「みんなで神頼みするか」
午後三時。
リビングでのティータイム。
「お菓子のないティータイムが地獄に感じる」ロイが元気なくコーヒーを飲むと「こんなに辛いティータイムは初めてだ」覇気のない声を出すマーティ。
『エルを悪者にするからだよ』シュールが窘めると「あれはマズった」反省するロイ。
結局、エルの「おやつ抜き期間」回避作戦はどれも失敗に終わっていた。
「エルのことを甘く見てた……」
「艦長はロイなんだから、言うこと聞く必要ないだろう?」
「……本気で言ってるのか?」
「……いや。言ってみただけだ」
「冗談に聞こえないから……」
「……気を付ける」
また黙ってコーヒーを飲むと「そういえばアニスがいないが、どこ行ったんだ?」
「さあ。そろそろ来るんじゃないか?」
魂が抜けたような顔の二人に『お菓子がないだけなのに、どうして耐えられないくらい辛いって顔するんだろう?』シュールには理解できないらしい。
そこへ、アニスがトレーを持って入ってきた。
「アニス。どこ行ってたんだ?」ロイが間の抜けたような声で聞くと「あの、ケーキ、焼いた」と言うので二人の顔付きが突然変わる。
「今、ケーキって言った?」
「そういえば、チョコの匂いがするぞ」
アニスがテーブルまで来るとトレーを乗せ「チョコレート、ケーキ、だけど、いい?」
「もちろん!」二人とも即答。
「今、切る」ナイフで均等に切り分けると、一切れずつお皿に乗せて二人に渡す。




