31 第三の門の場所
その日の夕方、第三の門について調べていたマーティから場所がわかったと連絡がきたので、これからのことについて話し合った。
作戦会議室。
「次の目的地はゴールドデザート星だ」
マーティは座っている中央テーブルの下からキーボードを引きだすと、3Dスクリーンをテーブル中央に映しだし、宇宙座標を表示する。
「目的の場所はコードEDA―RZⅡ、東部乾燥エリアの研究地帯第二にある、ルバーブ系の第五惑星ローゼルの衛星の一つだ」
「今度もずいぶんと遠いな。着くまでどの位かかるんだ?」
「物資などの補給時間を考えると、順調に行って三ヶ月ちょっとだな」
「約三ヶ月か」
「ルバーブ系はバーニングゾーンのレベルⅣにある」
「レベルⅣか。かなり暑いな。まあ、僕は暑さには慣れてるから」
「ロイがいたファルネス系はリゾートゾーンだったな。気温レベルはどの位なんだ?」
「レベルⅢだ。亜熱帯気候だから酷暑ではないけど。マーティは大丈夫か?」
「寒さに比べれば」
「アニスはこれから鍛えないといけないね」
「頑張る」
「で、そのゴールドデザート星はどんな星なんだ?」
「この星には、特別環境区の保護鳥に指定されてるラズベリーバードの生息地がある。そのため、星の殆どが指定観察区域だ」
「ヘェ、あのラズベリーバードの生息地があるのか」
「ラズベリ、バード?」
「アニスは知らないんだ。この鳥は名前のとおり全身ラズベリー色をしてるんだよ。大きな鳥で、別名、火の鳥なんて呼ばれてる……もしかして、第二の口伝に出てきた赤い鳥って、ラズベリーバードのことか?」
「たぶんな。ゴーツリーが話してくれた口伝を再生してくれ」と言われ、ポケットから携帯を取りだすと再生する。
『東の彼方、三つ子を持つ炎の母あり。赤い鳥羽ばたく楽園の南。灼熱の雪が舞う紺碧の空の下。深緋の道の先に、次への門が現れる』
「最初の東の彼方は説明しなくともわかるだろう」
「アイスゾーンから見たバーニングゾーンの位置だ」
「次に、ゴールドデザート星を衛星に持つ第五惑星ローゼルは、土壌が酸化鉄を多く含んでいるため、赤い色をしてる」
「炎の母か」
「衛星だが、ゴールドデザート星のほかに、シルバーデザート、ブロンズデザートという名の二つの衛星がある」
「三つ子ね」
「そして、ラズベリーバードの生息地」
「赤い鳥羽ばたく楽園」
「ゴールドデザート星にある指定観察区域の中には、広大な砂漠があるそうだ。その砂の色が金色なところから、星の名が付いたらしい」
「黄金の幕と関係がありそうだな」
「それともう一つ。紺碧の空が見られるのは、地上では砂漠地帯だけだそうだ」
「本当なのか?」
「ああ。調べた。紺碧というのは濃い青色のことで、この色が見えるのは、空気中に埃や塵がない、澄んだ空気の所だけだそうだ」
「砂漠なら、砂が大量に飛んでるだろう?」
「風のない昼間に見えるそうだ」
「なるほどね」
「あとのことは行ってからでないとわからないが、俺がこの星に目を付けた理由が、これらの一致だ」
「僕もその星だと思う」
そこへ、エルが入ってきた。
「今、呼ぼうと思ってたところだ」声を掛けるマーティが「目的地と立ち寄る星をだした。これからデータを転送するから確認してくれ」送信ボタンを押すと「それと、電気室の本格的な修理は最初に立ち寄る星でやる」
「そうだ。その事があったんだ」思い出すロイが「どの位かかりそうなんだ?」エルに聞くと、担当部署から送られてきたデータを確認して「修理班からの報告からだと、一週間くらいだって」と答える。
「ずいぶん掛かるな」
「最新艦だから、修理にもそれなりの技術と部品がいるらしいよ。対応できる人の人数によって、掛かる時間が違ってくるんだって」マーティから送られてきたデータを見ると「三日後、着陸許可を取るよ」
「それまで持つのか?」
「予備の電気室があるから、スピードは出せないけど大丈夫らしいよ。じゃあ」と言って会議室から出ていく。
「黒焦げだったんだ。修理範囲も広いだろうし、専門技術を習得してる技術者が必要になる。まあ、大型艦だからこそ予備の電気室があるから、運航に支障はないはずだ」
「すごい時間のロスだよな。お金も掛かるし」事前の予測修理見積を見るロイがため息を吐く。
そして午後六時。
レジーナ・マリス号はファイヤーブリザード星を出発した。




