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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
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30 口は禍の元

 

 彼らが帰るとエルが新しいコーヒーを入れ「お疲れ様」三人にカップを渡す。


「こんなときに、厄介(やっかい)ごとは勘弁(かんべん)してほしいよ」困ったようにロイが(つぶ)くと「今回は不可抗力(こうりょく)だ」他人事のようなマーティ。


「ところで」声を掛けてくるエル。「彼女を紹介してくれないの?」アニスを見るので「ああ、そうだ。まだ紹介してなかった。彼女はアニス。新しいクルーだよ」アニスを見ると「彼は通信担当のエル。裏の艦長かな」


「何言ってんだよ。鉄砲玉のようにどこかに行ったっきり、何日も連絡を寄越さないで、出発当日に無理難題を押し付けたうえに、大勢引き連れて戻ってくるから、僕が代わりに対応してるんだろう」


「あれは……申し訳ないと思ってる」

「そんなこと言われても、俺たちは被害者だったんだぞ」


「連絡はしようよ、マーティ」

「……そうだな」


「とにかく、(さわ)がしいところだけど、仲良くやっていこう」


「は、はい。お願い、します!」立ち上がり、深々と頭を下げるので「そんなにかしこまらなくていいよ!」


「エルが怖いこと言うから、アニスが(おび)えるじゃないか」

「怖いこと?」


「ロイ。なにも本人の前で言うことないだろう」

「本人の前で?」

「……」


「二人とも、当分おやつ抜きだね」

「エル! 今の冗談わからない?」

「わからない」


「今のは彼女の緊張をほぐそうと思って言ったんだ。星の外に出るのが初めてだから、艦に来てからずっと緊張してて、冗談言えば少しは気が楽になるんじゃないかと思ったんだよ。本当はいつも感謝してるんだ」


「エルがいてくれるから、俺たちは自由に動けるんだ」マーティが同意すると「ま、いいでしょう。けど、人をダシに使うのはよくないよね。なので、三日間、おやつ抜き!」


「エル!」

「ちょっと待て!」


「あ、エルさん。ごめん、なさい。私の、せい」


「君が(あやま)ることじゃないよ。星から出るの初めてなんだ。じゃあ緊張するね。でも、大丈夫だから、心配ないよ」


「は、はい!」


「じゃあ、僕は仕事に戻るから」

「エル! ちょっと待て!」ロイが慌てて止めると「口は(わざわい)の元だろう? 気を付けないとね」


「いや、だから!」

「エル! 話は終わってないぞ!」


 二人を無視して会議室から出ていく後ろ姿を見送ると「マズいことになった」真剣に悩むロイに「回避するための対策を考えろ!」焦るマーティ。

 


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