29-2 護衛者
「そうだったんですか。もっと早くお会いしていれば捕まえられたかもしれなかったのに。いや、実に惜しい機会を逃しました」悔しそうに手を握るので「あれをどうやって捕まえるんですか?」聞き返すと「我々もそれなりの部隊を率いていますから」自信を持って答える。
「……そうなんですか」一抹の不安があるが「それにしても、自分たちの成果を評価してもらえないという理由から、一部隊を連れて出ていくなんて、すごいですね」話を進めると「こんな話をしていいのかわかりませんが、部隊が彼女たちに付いてったらしいんです」
「エ?」
「では、最初はロサ姉妹二人が抜けることになってたのか?」マーティが話に加わる。
「どうもそうらしいんです。詳しい事はわかりませんが、ある系星の独立を阻止する任務に行った後、急に辞めると言い出したらしいんです」
「……そういう流れか」
「経緯をご存じなんですか!」また身を乗り出してくるので、仕方なく説明する。
自分は独立を阻止された側で、追い詰められたとき、助っ人として入っていたロイのとっさの判断で実行した作戦が功を奏し、逃げだせたことを話すと
「素晴らしい! あのゲリラ部隊から逃れたとは、今まで聞いたことがありません。ぜひ、うちの課に来ていただいて、秘訣をレクチャーしていただきたい!」
ロイに向かって力説するので「それは過大評価し過ぎです。僕たちは逃げるのに必死でしたから、たまたま立てた作戦がうまくいっただけです」
話が大きくなりそうなので訂正すると「そんなご謙遜を。実は、秘密兵器でもお持ちなのではありませんか?」
探るような目付きするので(実はそうなんです、と言えるわけないからな)
「そんなものありませんよ」手を横に振り「本当に、あの時は土壇場で立てた作戦がたまたま上手くいっただけです」
丁寧に否定すると、イノンドは腑に落ちないという顔をするが「まあ、とにかく、彼女たちの資料提供の理由がわかりましたので、のち程データをお送ります」
椅子に座り直すので「ありがとうございます」ホッと息を漏らす。
「それと、彼女たちの狙いがあなたたちだということがわかりましたので、これから護衛の意味も含めて同行させていただきます。よろしいですね?」
相変わらず穏やかな表情をしているが、口調は威圧的な雰囲気を持っていて、断ることができない状態。
どうしたものかとマーティを見ると「いつまでも付きまとわれたら迷惑だ」と言うので「わかりました。お願いします」申し出を受けると、その後、打ち合わせを始めた。
大まかに内容を決めると「では、我々は戻って準備を始めますので、これで失礼します」立ち上がるイノンドに「よろしくお願いします」声を掛けて見送った。




