27-1 追っ手の正体
ゴーツリーの仕事の関係で別の町に寄ったとき、もう一つの問題と遭遇することになった。
それは、打ち合わせに時間が掛かると言われ、待っている間、コーヒーでも飲んで時間を潰そうと、近くのカフェに入ったときだった。
「ウワッ! クラシック人形だ!」
「ハ? ロイ、何言って……ロサ・アルバ!」
「あの人、知り合い?」目を丸くするアニス。
「あら、どうしてここにいらっしゃるの? 確か、南のほうへ行ってらっしゃるとお聞きしてましたのに」
窓際のテーブルに座ってお茶を飲んでいたが、二人に気付くと満面の笑みを浮かべて立ち上がり「そうですの。あの情報はガセでしたのね。あたくしとしたことが、そんなことに気付かないなんて」嘆かわしいと、フリルの付いたハンカチを握りしめ「ですから、いくらお捜ししてもお会いできなかったんですのね」悲しみを前面に押しだす。
『気候が変わっても、あの服装は変わらないんだね』自分のポリシーを貫いていることに感心するシュール。
「今日もすごい出で立ちだな。羽根の付いたベレー帽をかぶれば、中世風お嬢様学校の制服だぞ」
「あれが奴の制服だからな。その分析はあながち間違ってはいない」
「分析の分析をするなよ」
「ロイが変な分析をするからだろう」
「あれに関しては変だと思わないぞ!」クラシック人形を指すと「まあな」納得する。
「それにしても、あんな爆発に巻き込まれてケガをしてる様子すらないなんて、サイボークかアンドロイドだと言われても驚かないぞ。クラシックアンドロイド」
「あのくらいの爆発でどうにかなる奴らじゃない。管理局内でも、スイッチの壊れた破壊人形と呼ばれてたからな」
「……やっぱり人形と言われてたんだ」
その時、クラシック人形が黙って見ていることに気付き、話を止めると「お話は終わりましたの?」にこやかに声を掛けてくる。
「なぜ僕の艦に爆弾を送りつけたんだ?」ロイが理由を聞くと「それは、お会いできるチャンスを作りたかったからですわ」
「ハ?」
「艦が修理のためにドックへ入れば、直るまでお時間ができますでしょう? そうすれば、お会いできる時間がたくさんできますもの」
「……言ってる意味がわからない」
「やっと追いつきましたのに、偽の情報を掴まされて違う場所を捜してしまいましたけれど、こうしてお会いできたということは、やっぱり運命なんですわ!」
ゾゾゾゾゾゾーッ、ロイの背筋を冷たいものが走り抜ける。
「なんか、今、聞きたくない言葉が、あのクラシック人形から聞こえた気がする」
「あたくしたち、運命の糸がつながっ……」
「マーティ、店を変えよう」アニスの腕を掴み、踵を返して出口に向かうと「お姉さま。どうなさいましたの?」向かいから黒いクラシック人形が歩いてくる。




