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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
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25-2 尋ね人

 

「課せられた運命ですか?」

「君は先ほど、事件を起こした犯人がわかり、動機もわかったと言ったね?」


「はい」

「では、その動機とはどんな事だったんだね?」


「ある花を巡って起きた、人間の(みにく)い欲望によるものでした」

「その元になった花はどういうものだったんだね?」


「その花は、ある男が仕事先で貰ったものでした」

「どこの誰から?」


「それは、仕事先の星で偶然助けた人で、詳しく素性(すじょう)を聞いてなかったそうです」

「そうか。それにしても、なぜ花一つでそんな大事になったんだね?」


「それは、珍しい花だったからです」

「事件を起こした人物は、異様な花のコレクターだったのかな?」

「いえ」


「コレクターでもないのに、どうしてそんなにその花に(こだわ)るんだね? いくら珍しいといっても、調べれば、その花がどこにあるのかわかるだろう? 争わなくとも、そこへ採りに行けばいいことだ」


「それは、この世界に生息してるものではなかったから、行くことができなかったんです」

「この世界に生息してなかったら、一体、どこの世界に生えてるというんだね?」


「それは、精霊界に……では!」

「そう。精霊界が君を呼んでるんだよ」


「精霊界が?」

「私の家に伝わってる口伝の中に、こういうものがある」



『精霊界に(わざわい)起こるとき、破魔(はま)の力を持つ青き剣(あらわ)る。金青(こんじょう)の剣、ラディウス・ソリッシュを持つ者を、我らが元へ送り届けよ』



「では今、精霊界に何かが起きてるというんですか?」

「だから君を呼んだんだろう」


「それなら、何もあんな事を起こさなくてもいいでしょう? 他にいくらでも方法があったはずだ!」


「今の段階では、どうしてそんな事が起きたのかわからないが、起きてしまう要因が発生したか、起こさなければならない何かがあったか、理由があるはずだ」


「起きた理由?」

「そうだ。理由もなく何か起きることはないからね」


「しかし!」

「その質問に答えるのは私ではないよ。君を呼んでる者が答えることだ」


 そう言われて、ロイは口をつぐんだ。


 押し黙るロイに「先に進みなさい。君の質問に答えてくれる、君を呼んでる誰かのところへ行くんだ」

「……行けるでしょうか」


「行かなければ、君が抱えてる問題は解決しないぞ」

「それは……」


「大丈夫、君なら行ける。行って、狂い始めてしまった状況を元に戻すんだ」


 返事をしないロイに「君にはすでに仲間がいるじゃないか。一人じゃないんだ」すると、マーティが肩を(たた)くので「……そうですね」


「私たちも、陰ながら応援するよ」


「……ありがとうございます」ロイの顔に笑みが戻ると「もう一つ、君たちに話さなければならない口伝があるんだが、記録するものを持ってるか?」


「携帯を持ってます」

「では録音してくれ。第三の門の場所についての口伝だ」


「本当ですか!」身を乗りだすロイとマーティ。


 ロイはポケットから携帯を取りだすと録音ボタンを押し「お願いします」



『東の彼方(かなた)、三つ子を持つ炎の母あり。赤い鳥羽ばたく楽園の南、灼熱(しゃくねつ)の雪が舞う紺碧(こんぺき)の空の下。深緋(こきあけ)の道の先に、次への門が現れる』



「これで場所が探せます」


「この口伝からみても、第三の門は相当暑い場所にあると思う。アニスは氷の世界しか知らない。暑さに対して抵抗力がないから、体調を気遣ってやってほしい」


「心得てます」


 意外なところで思わぬ情報を手に入れることができ、問題の一つが解決できそうである。


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