25-2 尋ね人
「課せられた運命ですか?」
「君は先ほど、事件を起こした犯人がわかり、動機もわかったと言ったね?」
「はい」
「では、その動機とはどんな事だったんだね?」
「ある花を巡って起きた、人間の醜い欲望によるものでした」
「その元になった花はどういうものだったんだね?」
「その花は、ある男が仕事先で貰ったものでした」
「どこの誰から?」
「それは、仕事先の星で偶然助けた人で、詳しく素性を聞いてなかったそうです」
「そうか。それにしても、なぜ花一つでそんな大事になったんだね?」
「それは、珍しい花だったからです」
「事件を起こした人物は、異様な花のコレクターだったのかな?」
「いえ」
「コレクターでもないのに、どうしてそんなにその花に拘るんだね? いくら珍しいといっても、調べれば、その花がどこにあるのかわかるだろう? 争わなくとも、そこへ採りに行けばいいことだ」
「それは、この世界に生息してるものではなかったから、行くことができなかったんです」
「この世界に生息してなかったら、一体、どこの世界に生えてるというんだね?」
「それは、精霊界に……では!」
「そう。精霊界が君を呼んでるんだよ」
「精霊界が?」
「私の家に伝わってる口伝の中に、こういうものがある」
『精霊界に禍起こるとき、破魔の力を持つ青き剣現る。金青の剣、ラディウス・ソリッシュを持つ者を、我らが元へ送り届けよ』
「では今、精霊界に何かが起きてるというんですか?」
「だから君を呼んだんだろう」
「それなら、何もあんな事を起こさなくてもいいでしょう? 他にいくらでも方法があったはずだ!」
「今の段階では、どうしてそんな事が起きたのかわからないが、起きてしまう要因が発生したか、起こさなければならない何かがあったか、理由があるはずだ」
「起きた理由?」
「そうだ。理由もなく何か起きることはないからね」
「しかし!」
「その質問に答えるのは私ではないよ。君を呼んでる者が答えることだ」
そう言われて、ロイは口をつぐんだ。
押し黙るロイに「先に進みなさい。君の質問に答えてくれる、君を呼んでる誰かのところへ行くんだ」
「……行けるでしょうか」
「行かなければ、君が抱えてる問題は解決しないぞ」
「それは……」
「大丈夫、君なら行ける。行って、狂い始めてしまった状況を元に戻すんだ」
返事をしないロイに「君にはすでに仲間がいるじゃないか。一人じゃないんだ」すると、マーティが肩を叩くので「……そうですね」
「私たちも、陰ながら応援するよ」
「……ありがとうございます」ロイの顔に笑みが戻ると「もう一つ、君たちに話さなければならない口伝があるんだが、記録するものを持ってるか?」
「携帯を持ってます」
「では録音してくれ。第三の門の場所についての口伝だ」
「本当ですか!」身を乗りだすロイとマーティ。
ロイはポケットから携帯を取りだすと録音ボタンを押し「お願いします」
『東の彼方、三つ子を持つ炎の母あり。赤い鳥羽ばたく楽園の南、灼熱の雪が舞う紺碧の空の下。深緋の道の先に、次への門が現れる』
「これで場所が探せます」
「この口伝からみても、第三の門は相当暑い場所にあると思う。アニスは氷の世界しか知らない。暑さに対して抵抗力がないから、体調を気遣ってやってほしい」
「心得てます」
意外なところで思わぬ情報を手に入れることができ、問題の一つが解決できそうである。




