25-1 尋ね人
「怒るのも無理はない。君の受けた仕打ちには、何と言って詫びたらいいか……」
「もう、いいです。あれは、私、運命。もう、気にしない」
「私を許してくれるというのか?」
「両親、亡くして、独りぼっち、私のこと、気遣って、いろいろ、してくれた。それで、十分」
「アニス……」
「おじ様、一人、苦しんでた。ごめん、なさい。でも、それ、過去。だから、もう、苦しまない」
「ありがとう。君は本当にやさしい子だよ」
ロイとマーティは、二人の会話を後部座席で黙って聞いている。
「ロイ君とマーティ君だったね?」
「はい」ロイが返事をすると「君たちが来るのを待ってたよ。アニスのことを頼む」
「あの、お聞きしたいことがあります」
「何だね?」
「なぜ、僕らがあなたの言う待ち人だとわかるんですか? 彼女が無くした半身を取り戻して、表情が変わってきたのは確かですが、だからといって、僕たちが待ち人だとはかぎらないですよね?
それに、門の中にはこれまでに人が入った痕跡がありました。僕らがその類の者だと考えられるのではありませんか?」
「それは、アニスの言動と行動の変化が見られたからだよ」
「どういう事でしょうか?」
「アニスの役目は「尋ね人」を門の中へ案内すること。第三の門の鍵を所有すること。当然、「尋ね人」と一緒に第三の門へ行くことになる。
その彼女が先日、星から出ることになると連絡してきた。彼女が星から出るということは「尋ね人」が来るということだ。
その事を確認すると「尋ね人」と「第一の鏡の泉の門のキーマン」が夢に出てきたと話してくれた。
そして今日、彼女と一緒にきた君たちは、アニスが話してくれた、夢に出てきた「尋ね人とキーマン」と同じ容姿をしてたからわかったんだよ」
「アニスの予知夢の内容を聞いてたんですか」
「ロイ君、君が「尋ね人」だ。君は金の彫刻が施された金青の鞘の剣、ラディウス・ソリッシュを持ってるだろう?
そしてマーティ君は、第二の門の鍵を所有する第一の門、鏡の泉の門のキーマン。
君はアニス同様、第一の門の守護獣、一角獣を象ったペンダントを持ってるはずだよ。
それと、君たちは第一の門を通過したとき、精霊からブレスレットもらってるはずだ。
門を通過したときに、証として門の象徴である稀少石が填まるものだよ」
「確かにもらいました。でも、これは、僕らのほかに二人、貰った者がいます。ですが、彼らは僕たちの旅に関係ありません」袖を捲ってブレスレットを見せると「そんなことないだろう。関係ない者に渡すことはない。彼らも何らかの関わりがあるはずだよ」
「確かに、影の森の管理やミルたちのことを任せたが……」アルバルとセージの顔を思い出すマーティ。
「他に、ブレスレットについて知ってることがありますか?」
「いや、これだけだよ」
「そうですか」ロイは考えると「もう一つお聞きしたいことがあります。僕は、住んでた系星で大変なことが起こり、その解決方法を探すために旅に出ました。
その事件を起こした犯人は、ここへ来る前にわかりました。起こした動機もです。でも、解決方法がわからなくて、こうして旅を続けてます。
もしその事件が起きなければ、僕は旅に出ることはありませんでした。なのに、どうして僕が来ることが、そんな前から言い伝えられてきたんですか?」
「君は「尋ね人」として、旅に出なければならない、課せられた運命を持ってるからだよ」




