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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
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24 もう一人の管理者

 

 午前十一時二十分。

 目的の配送センターに着いた。


 車を駐車場の端に()め、隣接して建っている事務所に入ると、受付の女性が奥の応接間に通してくれた。


「ここで待っててくださいね」


 中に入ってソファに座ると、先ほどの女性がお茶を持ってきて「なんか、雰囲気が変わったわね」アニスに話し掛ける。「前より表情が明るくなったわ。素敵な男性が二人もいるからかしら?」


「エッ?」両隣に座っている二人を見ると「ち、違い、ます。案内、してる、だけ」顔を赤らめ、慌てて言い訳するので受付の女性が驚くと、ロイとマーティも、感情を表にだすアニスを見る。


 そこへ中年の男性が入ってきたが、ただならぬ雰囲気に足を止めると「あ、社長」受付の女性が気が付く。


「何があったんだ?」


「それが……」アニスたちを見ると「これは珍しい! アニスが男性を連れてくるなんて初めてだ!」

「おじ様」


「ホォ、そんな顔を見るのも初めてだぞ」

「おじ様!」


「ああ、いや、すまん」社長が三人の向かいに座ると「こちら、配送センター、社長、ゴーツリー、さん。母、古い友人」ロイたちに説明して「今日、一緒、乗る、ロイ、マーティ」二人をゴーツリーに紹介する。


「今回は、無理なお願いを承諾(しょうだく)していただき、ありがとうございます」ロイが頭を下げると「いやいや、いいんですよ。そうか、君たちなのか」


「ハ?」


「いや、亡くなった彼女の両親から面倒を見るように頼まれてたんでね。その役目を果たすときが来たのかと思ったんだよ」


 そこへ、先ほどの受付の女性が出発の時間だと知らせにきた。


「今行くよ。そうそうアニス、乗ってきた車のキーはどこかな?」


「ここ」ポケットから出して渡すとゴーツリーはそれを女性に渡し、外へ出ると、乗っていく配送車へ案内してくれた。


 彼の運転で助手席にアニスが座り、ロイとマーティは後部座席に座る。



 午後十二時。

 二十台の配送車が、首都マルジェス市に向かって出発した。


 走りだして少し経つと「氷の炎の門を通過できたようだね」ゴーツリーが思いも寄らないことを言ってきた。


「おじ様。なぜ、その事、知ってる?」聞き返すと「驚くのも無理はない。君は知らないだろうが、私の家も、氷の炎の門を守る役目を(おお)せつかってるんだよ」


「そんな。初めて、聞いた。お母さん、話して、くれなかった」


「この事は、受け継ぐ者が十五歳になったら話すという決まりがあるからだよ。突然の事故だったから、君に話すことができなかったんだ」


 黙り込むアニスに「本当は、君が十五になったときに話すつもりだったんだが、半身を無くして辛い生活を送ってるところへ、さらに負担を掛けてはいけないと思って、私が代わりに役目を務めてきたんだよ」


「おじ様、私、半身、なくした、理由、知ってた?」

「あれは、私のミスで起きたことなんだよ」

「どういう、こと?」


「あれは七年前の一昨日のことだ」ゴーツリーは少し間をあけて話しだした。

「どこかの星の調査チームが、海の精の休息地を調べたいので場所を教えてほしいと、私を訪ねてきたんだよ。一体、誰から聞いてきたのか、とても驚いたね。


 彼らはあの場所に人型の岩が出てくることを知ってて、詳しく調べたいと言ってきた。


 どうして私に聞きにきたのか、不思議に思ってその事を聞くと、ある者から聞いたとしか答えなかった。情報提供者のことは他言しない約束なので、話せないというんだ。


 あまりしつこく聞くと、知ってると答えるようなものだからそれ以上追及(ついきゅう)できなくて、真相はわからなかった。


 もちろん、私は知らないと答えた。その日は町でお祭りがあるし、そんな岩のことも知らないとね。


 相手はたいぶ(ねば)ったんだが、知らないものは答えようがないと最後まで言いとおすと、(あきら)めて帰っていった。


 それ以降、彼らの(うわさ)を耳にしなかったし現れなかったから、(あきら)めて引き上げたものと思い込んでしまって、彼らの監視(かんし)を止めてしまったんだよ。その結果、あんな事になってしまったんだ。


 君が半身を無くす原因を作ったのは私なんだ。申し訳ないことをした」


 知らなかった裏事情を知って、黙り込むアニス。


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