24 もう一人の管理者
午前十一時二十分。
目的の配送センターに着いた。
車を駐車場の端に停め、隣接して建っている事務所に入ると、受付の女性が奥の応接間に通してくれた。
「ここで待っててくださいね」
中に入ってソファに座ると、先ほどの女性がお茶を持ってきて「なんか、雰囲気が変わったわね」アニスに話し掛ける。「前より表情が明るくなったわ。素敵な男性が二人もいるからかしら?」
「エッ?」両隣に座っている二人を見ると「ち、違い、ます。案内、してる、だけ」顔を赤らめ、慌てて言い訳するので受付の女性が驚くと、ロイとマーティも、感情を表にだすアニスを見る。
そこへ中年の男性が入ってきたが、ただならぬ雰囲気に足を止めると「あ、社長」受付の女性が気が付く。
「何があったんだ?」
「それが……」アニスたちを見ると「これは珍しい! アニスが男性を連れてくるなんて初めてだ!」
「おじ様」
「ホォ、そんな顔を見るのも初めてだぞ」
「おじ様!」
「ああ、いや、すまん」社長が三人の向かいに座ると「こちら、配送センター、社長、ゴーツリー、さん。母、古い友人」ロイたちに説明して「今日、一緒、乗る、ロイ、マーティ」二人をゴーツリーに紹介する。
「今回は、無理なお願いを承諾していただき、ありがとうございます」ロイが頭を下げると「いやいや、いいんですよ。そうか、君たちなのか」
「ハ?」
「いや、亡くなった彼女の両親から面倒を見るように頼まれてたんでね。その役目を果たすときが来たのかと思ったんだよ」
そこへ、先ほどの受付の女性が出発の時間だと知らせにきた。
「今行くよ。そうそうアニス、乗ってきた車のキーはどこかな?」
「ここ」ポケットから出して渡すとゴーツリーはそれを女性に渡し、外へ出ると、乗っていく配送車へ案内してくれた。
彼の運転で助手席にアニスが座り、ロイとマーティは後部座席に座る。
午後十二時。
二十台の配送車が、首都マルジェス市に向かって出発した。
走りだして少し経つと「氷の炎の門を通過できたようだね」ゴーツリーが思いも寄らないことを言ってきた。
「おじ様。なぜ、その事、知ってる?」聞き返すと「驚くのも無理はない。君は知らないだろうが、私の家も、氷の炎の門を守る役目を仰せつかってるんだよ」
「そんな。初めて、聞いた。お母さん、話して、くれなかった」
「この事は、受け継ぐ者が十五歳になったら話すという決まりがあるからだよ。突然の事故だったから、君に話すことができなかったんだ」
黙り込むアニスに「本当は、君が十五になったときに話すつもりだったんだが、半身を無くして辛い生活を送ってるところへ、さらに負担を掛けてはいけないと思って、私が代わりに役目を務めてきたんだよ」
「おじ様、私、半身、なくした、理由、知ってた?」
「あれは、私のミスで起きたことなんだよ」
「どういう、こと?」
「あれは七年前の一昨日のことだ」ゴーツリーは少し間をあけて話しだした。
「どこかの星の調査チームが、海の精の休息地を調べたいので場所を教えてほしいと、私を訪ねてきたんだよ。一体、誰から聞いてきたのか、とても驚いたね。
彼らはあの場所に人型の岩が出てくることを知ってて、詳しく調べたいと言ってきた。
どうして私に聞きにきたのか、不思議に思ってその事を聞くと、ある者から聞いたとしか答えなかった。情報提供者のことは他言しない約束なので、話せないというんだ。
あまりしつこく聞くと、知ってると答えるようなものだからそれ以上追及できなくて、真相はわからなかった。
もちろん、私は知らないと答えた。その日は町でお祭りがあるし、そんな岩のことも知らないとね。
相手はたいぶ粘ったんだが、知らないものは答えようがないと最後まで言いとおすと、諦めて帰っていった。
それ以降、彼らの噂を耳にしなかったし現れなかったから、諦めて引き上げたものと思い込んでしまって、彼らの監視を止めてしまったんだよ。その結果、あんな事になってしまったんだ。
君が半身を無くす原因を作ったのは私なんだ。申し訳ないことをした」
知らなかった裏事情を知って、黙り込むアニス。




