23-2 第二の門 通過
しばらくすると、マーティがお風呂から上がってきた。
「いい湯だった。なんだ、ビールを飲んでるのか?」
「まだある。持ってくる」アニスが席を立つので「悪いな」声を掛けると空いている席に座る。
「けっこう度数が高いぞ。すきっ腹に飲むと回りが早くなる」
「さっきホットウィスキーを飲んだから、もう酔いが回ってる」
「ホットウィスキー? じゃあ、何か食べてから飲めよ。アニス、水でいいよ」
「俺には飲ませない気か?」
「食べてから」
「仕方ないな」
「そうだ。帰りはアニスの知り合いに頼んで、マルジェス市まで乗せてもらおうと思ってる」
「なぜ?」
「そろそろ、彼女が流した情報がガセだったことに気付いてると思うんだ。今の状態で襲われたら応戦できないだろう? 用心のためにも、カムフラージュしたほうがいいと思う」
「確かにな。で、その知り合いには連絡したのか?」
「明日の朝一番で連絡してくれるそうだ」
そこへ、アニスが料理をワゴンに乗せて運んできた。
「ポトフ? 短時間でできるものじゃないだろう?」マーティが不思議そうな顔をすると「冷凍。だから、温める、だけ」種を明かしてキッチンに戻ると、焼いたパンを持ってくる。
「いい匂いがすると思ったら、パンを焼いてたんだ」
「これも、インス、タント」
「構わないよ。おいしそうだ」
アニスが席に着くと、冷やしたワインのコルクに栓抜きを刺し、ぎこちなく回しはじめるので「僕がやるよ。かしてみな」手を出し「こういう力仕事は男にやらせなきゃ」キュキュッと回すとスポンと音がしてコルクが抜け、二人のグラスにワインを注ぐと「さっきビールを後回しにしたのに、もっと度数の高いワインで乾杯か?」
「どっちにしても、飲むことに変わりないということだ」
「潰れるなよ」
「そうなったら担いでくれ」
「ヤダね」
「なんだと」
「あの、ケンカ、よくない」小さな声で言うアニスに「エッ? 冗談だよ。本気じゃないから」
「こんな会話、聞き流せ」
「ビックリしたよね。ごめん。気を付けるよ」マーティに目配せすると「言葉遊びしてると思えばいい」
「言葉、遊び?」理解できていない顔をするが、ケンカしているわけではないと理解する。
「さあ、ポトフを皿に入れてくれないか? 第二の門を通過した祝杯をしよう」
アニスがお皿に入れて渡すとロイはグラスを持ち「では、無事ではなかったけど、第二の門を通過したということで、乾杯!」
過酷な階段上りを体験したロイとマーティはすごい食欲をみせ、最初に温めた分だけでは足りなくて、追加したほどである。
もちろん、食後のコーヒーも欠かさない。
「おいしかった」満足顔のロイ。
「食後のコーヒーもうまいと、言うことないな」お替わりするマーティ。
「そうだアニス。筋肉痛につける塗り薬か何かないかな。先に塗って、痛みを最小限に留めたいんだ」
「たぶん、ある」部屋から出ていく。




