23-1 第二の門 通過
午前零時すぎにアニスの家に着いたが、二人は出発してすぐに眠ってしまっていた。
「起きて。家、着いた」
「ン? ああ、寝ちゃったのか」目を擦りながらジープから降りると、寒さで一気に目が覚める。
「顔が凍る!」顔を覆うロイ。
「空気が痛いぞ!」口を塞ぐマーティ。
「早く! 入る!」玄関から呼ばれて、雪に足を取られながら歩いていく。
「夜、一気、気温、下がる」
玄関に入ると服についた雪を払い、部屋に入ると部屋の電気を点ける。
「眠気が吹っ飛んだ」目を見開くロイ。
「肺が痛い」咳こむマーティ。
「今、暖房、入れる。もう少し、我慢」スイッチを入れるとゴォッと音がする。
部屋が温まるまで時間が掛かるので、寒くてジッとしていられないロイとマーティは、部屋の中をウロウロと歩き回る。
「何か、食べる物、作る。お風呂、入って」場所を教えると「温泉、引いて、ある。いつでも、入れる」と言われ「温泉か。先にいいか?」マーティに聞くと「早く出てこい」仕方ない、という顔をするので「悪いな」着替えを持って風呂場へ急ぐ。
少しすると部屋が暖かくなってきたので、コートを脱いで椅子に座ると、アニスがホットウィスキーを持ってきた。
「前に、お父さん、貰った、もの」
「ああ、助かる」早速、口を付ける。
キッチンへ戻ったアニスがしばらくしてお皿を持ってくるとテーブルのセッティングを始め「マーティ。これから、どうする?」手を動かしながら「あなた、役目、終わった。故郷、帰る?」
「いや。このままロイと一緒にいく。どうやら、裏で俺たちの知らないことが動いてるらしい。それが何か突き止めたい」
「そう」セッティングが終わり、椅子に座る彼女に「一緒に来てくれるだろう?」と聞くと「ええ」軽く頷く。
「荷物は?」
「街の、アパート、運んで、ある」
「そうか」
「第三の門、どんな所、ある?」
「そうだ。第三の門の場所について、それらしいことを聞いてないか?」
「いえ、何も」
「そうか。口伝にあったことだけでは、絞り込むのが難しいんだ」
「……ごめん、なさい」
「謝らなくていい。前回はたまたま俺が知ってただけだ」
そこへ、サッパリした顔をしてロイがお風呂から上がってきた。
「こんな所で温泉に入れるなんて思わなかったよ。いい湯だった」
「この辺、広範囲、湧きでてる」
「では、俺もその温泉に入ってくるか」マーティが着替えを持ってお風呂場へ向かう。
「何か、飲む?」立ち上がるので「そうだな。冷たいものがいいな」
「ちょっと、待ってて」キッチンへ行き、瓶ビールを持ってくると、栓を抜いてグラスに注ぐ。
「ありがとう」一気に飲むと「風呂上がりの一杯はやめられないな!」
「飲める人、みんな、そう言う」
「ここのビールはアルコール度数が高いね」と言いつつグラスに注ぐと「この星、お酒、みんな、アルコール度数、高い。寒さ、よけ」
「なるほど。そういえば、一昨日飲んだワインも度数が高かったな」おいしそうに二杯目を飲むと「そういえば、聞きたいことがあるんだ」
「アッ。第三、門の場所、聞いて、ない。ごめん、なさい」
「エッ? ああ、そうなんだ。別に謝らなくていいよ。そうすんなりいくとは思ってないから。聞きたいのはその事じゃないんだ」
「……なに?」
「ここら辺で、マルジェス市へ行く配送車か何か出てないかな?」
「配送車? 知り合い、一つ手前、町、運送業、してる。確か、マルジェス市、物資、運んでる」
「本当? その人に連絡取れないかな?」
「取れる。なぜ?」
「追っ手だよ。今頃、君が流した情報がデマだと気付いてるころだと思う。だから、このまま帰ったら、途中で襲撃される可能性があるんだ。今は応戦できるだけの武器を持ってないから、気付かれないように戻りたいんだ」
「便乗、させて、もらう?」
「それが一番いい方法だと思うんだ」
「明日、朝一番、連絡する」
「ありがとう」残りのビールをグラスに注ぐと「君には申し訳ないけど、ここは苦手だな」
「よそから、来た人、みんな、同じこと、言う」
「まあ、住めば都だけどね」
「……そう、ね」
「次の第三の門は、かなり暑そうな所らしい」
「私、想像、できない」
「だろうね。君は暑さを知らないから。体調を崩さないように、暑さに慣れる訓練をしないといけないね。途中で倒れでもしたら大変だ」
「迷惑、掛けない、よう、気を、付ける」
「無理をしなければいいよ。僕たちも気を付けるから」




