22 疑問の行方
外に出て振り返ると扉が閉まり、描かれている水龍の彫刻が光りだすと『ソレルから貰ったブレスレットを見てみろ』
「なんでブレスレットのことを知ってるんですか?」
『尋ね人が、第一の鏡の泉の門を通過したときに貰うものだからだよ』
「そうなんですか」防寒具の袖を捲ると『この門の象徴であるミルキーブルーの石が填まってるはずだ』
「アッ!」ブレスレットをよく見ると、模様だと思っていた窪みの幾つかに、例のミルキーブルーの石が填まっている。
『これが、門を通過したという証だ』
「高価なスタンプラリー表みたいだな」ブレスレットを見るマーティ。
「では、残りの窪みに、これから行く門の象徴の石が填まるんですね?」
『そうだ』
ロイは少しの間ブレスレットを見ると「水龍……聞きたいことがあるんですが、答えてもらえるでしょうか」
『……なんだね?』
「なぜ僕が、尋ね人と呼ばれるんでしょうか」
『……やはり、気になるか』
「はい」
『テッセンに聞いていたから、私にも聞いてくるだろうと思ってたよ』
「教えてもらえるでしょうか?」
『……テッセン同様、私からも具体的なことは言えないんだ』
「……そうですか」
『しかし、説明に近いことをこの先で聞くことができるだろう』
「この先とは、どういうことですか?」
『言葉どおりだよ。進めばわかる』
「それも教えてくれないんですか?」
『我々にはそれぞれ役目があるんだよ。その事を伝えるのは私の役目ではないんだ』
「……そうですか」
『では、気を付けて進みなさい』
「……そう、ですね」
『ラディウス・ソリッシュの精霊を頼んだよ』と言うと光が消え、元の氷の山肌に戻ると、ロイとマーティは消えてしまった門の場所をしばらく見ていた。
「さて、行くか」マーティがジープに向かって歩きだすので、ロイも後から付いていく。
見上げると満天の星が煌めいていて、海に目を向けると、重なった二つの月に照らされて、彫刻の人魚が命を吹き込まれて動いているように見える。
「シュール、コストマリー。あれ? どこだ?」ロイが辺りを見回すと『門から出たから、剣の中に戻った』
「そうか。出ていられるのは門の中だけだったね。コストマリーとは話せないのか?」
『門の中でしか話せないみたい』
「なんで?」
『わからない』
「しかたないな。何はともあれ、彼女のお陰で助かったからね。ちゃんとお礼を言いたかった」
『第三の門に行けば、また会えるよ』
「そうだな」
ジープに乗り込むと、エンジンをかけるアニスが別のポットを出してきて、カップにコーヒーを入れる。
「今ほど、コーヒーの香りが嬉しいときはないよ」カップを受け取るとおいしそうに飲み「ホッとする、とはこういう状態を言うんだろうな」後部座席のマーティがゆっくり飲む。
アニスも運転席で飲むと「エンジン、温まった、帰る」カップをしまい、ハンドルを握るとジープをUターンさせ、海の精の休息地をあとにする。
ロイとマーティは、何も言わずに窓から見える光景を見ていた。




