21 お咎めは
行きの倍の時間をかけて門の入り口まで戻ってくると「まるで、過酷なオリエンテーリングでもしたみたいだ」マーティが壁際に座り込むので「それを言うならトライアスロンだろう」ロイも座り込み「腹減った」と呟く。
『運動不足は解消されたか?』扉の右横にある水龍の彫刻が光りだす。
「運動不足と言われるほど鈍ってませんよ」ロイがムッとすると『そのわりにはバテてるようだが』
「よほどのアスリートでないかぎりバテるでしょう。あの氷の階段、何階分くらいあった?」マーティに聞くと「ゆうに三十階分はあった」やけ気味に答える。
『それは、忠告を守らなかった君たちの罰だろう?』
「姑息な仕掛けに引っ掛ったんだ」空腹なので余計イラつくマーティ。
『水龍』声を掛けるコストマリー。『テッセンに罰を与えないでもらえるかしら』
『ああ、その件があったね』
嫌な予感がロイとマーティの脳裏を横切る。
『彼が受ける罰を、誰かが代わりに受けるようなことを言ってたようだが』
しばらく沈黙が続く。
『さて、どんな罰がいいだろうか』
ロイとマーティは俯いたまま動かない。
『また、あの階段上りでもやってもらおうか』
「絶対に断る!」
「ロイ! 返事をするな!」
「あ、しまった!」
『そうか。君たちが代わりに罰を受けてくれるか』
「そんなこと言ってない!」
『今、返事しただろう』
言い返せないロイに「心配するな。もし、また氷漬けになって落とされても、テッセンを捕まえて、元の場所に戻れる別の方法を聞きだせばいい」
『おや、また彼に会えると思ってるのか?』
「マーティ、それは言っちゃダメだろう」
「……すまん」
『さて、罰だが』
『水龍』黙っていたシュールが話に入ってくる。『あんまり虐めないで許してあげて』
『これは困った。ラディウス・ソリッシュの守護精霊から言われたのであれば、見逃さざるを得ないな』
「マジで? やった!」
「シュール、あとでなんでも買ってやるぞ!」
『ずいぶんと現金だな』
「何とでも」聞き流すロイ。罰を受けなくて済むので、どう言われてもいいらしい。
「これで帰れる」ホッとするマーティ。
『まったく、いいコンビだな』
『水龍、ごめんなさい』謝るコストマリーに『大丈夫かい? 君もあの階段を上がってきたんだろう?』
『ええ、大丈夫よ』
『では、名残惜しいが、これ以上引き留めておくわけにいかないからな』すると扉が開き『これからいろいろなことがあるだろう。気を引き締めて行きなさい』
「お世話になりました!」だるい体にカツを入れて立ち上がると『筋肉痛に気を付けろ』と言われ「大丈夫ですよ。既になってますから」ぎこちなく歩きだす。




