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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
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19 奈落からの復活

 

「マーティ、まだ着かないのか?」


 どのくらい経つだろう。蛇行(だこう)する氷の階段を延々と上っている。


「かなり下まで落とされたからな。あとどの位あるのか見当つかない」


 ひたすら上を目指して上がっていく。


『もうダメ。足が上がらない』シュールが音を上げるので「そういえば、剣の中に戻れるんだろう? 無理して歩くことないよ」


『ヤダァ。ずっと剣の中にいたから、出られるときは外にいたい』


『だったら私の背に乗りなさい』後から上がってくるコストマリーが声を掛けてくるので『いいの?』見上げると『大丈夫よ。さあ』


「悪いな、コストマリー」シュールを抱き上げて彼女の背に乗せると『落ちないように後ろから見てて』と言われ、彼女を先に行かせると、再び上りはじめる。



「そろそろ俺も足が重くなってきた」息が上がってくるマーティ。


「さすがに(のど)(かわ)いてきたな」額の汗を拭くロイが「コストマリー、大丈夫か?」後ろから声を掛けると『私は大丈夫よ』元気な声が返ってくる。


「あの爺さんもこの階段を使ってるのか? だとしたらすごい健脚(けんきゃく)だな」感心するマーティ。

「この階段は、氷漬けになった者に対しての、(ばつ)として用意されたものじゃないか?」


「だろうな。動きづらいコートを着てるうえに、(すべ)りやすく長く続く氷の階段、気がめいる罰だ」

「何のためにこんな罰を用意したのか、理由を聞きたいな」


「ぜひ聞かせてほしい。仕返しする準備をしないといけないからな」

「ハハハ! 同感!」


 そんな話をしていると、前方にドアらしきものが見えてきた。


「ようやく目的の扉が見えてきたぞ」

「やっとか」


 先に着いたマーティは氷の扉の前に立ち、息を整えて取っ手を回すと、入った先は二メートルくらいの縦幅(たてはば)で、横に十メートルくらいある長方形の氷の部屋の真ん中あたりだった。


「部屋というより通路だな」


 あとからコストマリーとロイが入ってくると「ここは部屋なのか?」左右を見るロイが「どっちに行く?」と聞くと「そうだな。二人いるから、両方に行くってのはどうだ?」


「いいね」同意すると「様子を見て安全だったら呼ぶから、コストマリーはシュールとここで待っててくれ」


『わかったわ』ロイは左に、マーティは右へ歩きだす。



(ひざ)がガクガクしてるな」足を引き()るように歩くロイ。「さすがに、あの階段上りはきつかった」


「足の指が痛いな。マメができたか?」右足の小指に違和感があるマーティ。「まったく、なんであんなに階段を上らなきゃならないんだ」文句を言いつつ突き当り近くまでいくと、左に通路が続いていることに気付く。


「なんだ。やっぱり通路なのか」

「誰?」


 突然、曲がった先の通路から女性の声が聞こえてきた。


「そこにいるのは誰だ!」ポケットから小型の銃を取りだすと「その声、マーティ?」

「アニスなのか?」聞き返すと通路から彼女が顔を出し「無事、よかった」マーティの顔を見てホッとする。


「無事じゃない。足が痛くて泣きそうだ」苦虫を()みつぶしたような顔をして「この先はどこなんだ?」と聞くと「あの部屋。私、動いて、ない」


「動いてない?」通路を曲がると、そこは、ロイとマーティが氷漬けにされて落とされた、玉座に座りカルブンクルスを持つシレーニの像があるあの部屋だった。


 彼らは、玉座の後ろの壁裏にある空間に出たのだ。


「アニス、無事だったんだ。良かった」ロイが玉座を挟んだ反対側から声を掛けてくる。隣には、シュールを乗せたコストマリーが立っていた。


「こういう仕掛けだったとはね」玉座の右側の階段下に立つロイ。

「とりあえず、元に戻ってきたわけだ」左側に立つマーティ。


「ちょっと休まないか。(ひざ)がガクガクしてるんだ」ロイが足踏(あしぶ)みすると「俺も、マメができたみたいで足が痛い」マーティが玉座の横の階段に腰を下ろすと「絆創膏(ばんそうこう)、ある」とアニス。


「それは助かる」


「シュール、大丈夫か?」コストマリーの背から降ろすと、疲れすぎているのかその場にしゃがみ込むので抱き上げ、階段に腰掛けさせると隣に腰を下ろす。


『なんか飲みたい』

「そうだな。(のど)(かわ)いたな」


「私、紅茶、持って、きた」背負っているナップサックから保温ポット取りだすので「さすがアニス。シュール、紅茶があるぞ」声を掛け「アニス。マーティも飲むと思うから、先に渡してくれ。その後、ポットをこっちに(すべ)らせてくれないか?」


(すべ)らす?」


「玉座の正面には、要注意の水龍がいるから通れないし、玉座の後ろを迂回(うかい)してそっちに行くには距離がありすぎるから、ポットを(すべ)らせてこっちに寄越してほしいんだ」


「わかった」マーティにカップを渡すと、ポットを反対側にいるロイに向かって滑らす。


 氷の床なのでスムーズに滑り、ロイは受け取るとカップに紅茶を入れてシュールに渡すと、自分の分とコストマリーの分を入れる。


「カップが小さくて飲みづらいだろう。悪いな、コストマリー」

『大丈夫よ。ありがとう』


 ロイは一口飲むと「今まで飲んだ紅茶の中で一番うまいよ」

『ロイ、お代わりしていい?』シュールが空のカップを差しだす。


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