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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
110/1020

10 氷の炎の門

 

 三人が中に入ると、センサーでも付いているのか、すぐに扉が閉まる。


『扉を見て!』シュールの声に振り返ると「なんでこんな所にアニスが描かれてるんだ?」


 扉の裏側に、等身大の彼女の彫刻が浮き彫りになって描かれていた。


『よく来たな、(たず)ね人』突然、響くような低い声が聞こえてきた。


「誰だ!」不意の声に見回すと『扉の右側を見て! 水龍の彫刻が光ってる!』シュールに言われたところを見ると、浮き彫りになっている水龍の彫刻が淡い光を放っている。


「あなたは誰ですか?」

『私はこの門を守護してる者だ』光が強くなったり弱くなったりしながら聞こえてくる。


「では、あなたがこの門の守護獣ですか?」

『そうだ。アニス、久しぶりだな』


 彼女は、無表情で水龍の彫刻を見ている。


『お前に半身を返すときがきた。扉の前に立ちなさい』


「アニスの半身? では、彼女が感情をなくす原因になったのは、この扉に半身を取られたからなんですか?」


『そうだ。訳は彼女に聞くがいい。さあ』


 二人を見るアニスに(うなず)くと、彼女は恐る恐る扉の前に立つ。すると彼女の体が淡い光に包まれ、光が消えるとその場にしゃがみ込んだ。


「アニス! アッ」扉に描かれていた彼女の彫刻が、すっぽりと抜けている。


「どうなってるんだ?」二人がアニスを扉の前から連れてくると『しばらくは違和感が残るだろうが、じきに消える』と水龍が声を掛けてきた。


 そして、アニスの彫刻があったところに水龍の彫刻が浮き出てくると『では、気を付けていくがいい』言い終ると、暗かった奥へ続く通路に明かりが(とも)る。



「どこまであるんだ?」ロイがまっすぐ伸びる通路の奥を見ると、ウンザリした声を出す。

「先が思いやられそうだな」行く前から疲れが出てくるマーティ。


『気を抜かず、注意して行くんだな』そう言うと、彫刻の光が消える。



 氷の通路は(すべ)らないように配慮されているのか砂利(じゃり)のように氷が(くだ)けていて、思った以上に歩きやすかった。


 氷を()む音が響く中、ロイとマーティはアニスを間に(はさ)んで奥に進んでいくと「このランプ、どうやって光ってるんだ?」マーティが等間隔に点いているランプの一つに近寄っていく。


 ランプは氷でできていると思われる縦型で、長方形の箱の中に拳大(こぶしだい)のゴツゴツとしたミルキーブルーの石があり、それがロウソクの炎のように光っている。


「ディア・マレの像が着けてた巻貝のネックレスと同じ石のようだな」

 ロイがランプの中を見ると「どうやら水晶の一種みたいだな」


「発光する石か。聞いたことないな」

「僕もないよ」


「水晶は光らないのか?」

「光を当てれば反射するけど、水晶自体は光らないよ」


「そうなのか」

「宝石のことに詳しくないだろう」


「知らなくても生きていける」

「それはそうだけど」


「ロイは詳しいのか?」意外そうな顔をすると「それ程でもない」

「心配するな。生きていける」


「心配してないよ」

「とにかく、なぜこの石が発光するのか、ここで議論しても解決しない」

「そうだな。先へ行こう」再び奥へと歩きだす。


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