7 豪雪星のホテル
午後七時。
目的の町に入り、部屋を予約しているホテルに着いた。
「ホテルというよりアパートだな」
「マーティ!」
「田舎町、だから、我慢、して」
「すまん。悪いこと言った」
「いい。入る」バッグを持つと入り口に向かう。
ホテルの部屋はまあまあだったが、料理はすごかった。
「この肉、何の肉だ? 見たことないぞ」脂の乗った分厚いステーキを見るマーティに「アザラシ、仲間」とアニスが答えるので「エッ?」耳を疑う。
「アザラシの仲間って食べられるの?」ステーキを凝視するロイ。
「アイス、ゾーン。たくさん、いる。この星、肉、殆ど、これ。私たち、一緒、暮らす。これ、収入源、一つ」
「ヘェ、そうなんだ」
「口、合わない?」
「いや、初めてだから、ちょっと驚いただけだよ。アザラシだってネットか動物園でしか見たことないし、その仲間だといっても、食べるなんて聞いたことないから」
「ところ変われば食べ物変わるだな」気持ちを入れ替えてナイフを持つマーティ。
しかし、ステーキに合わせた蒸留酒はなかなかのものだった。寒い星だけあってアルコール度数は高かったが、癖になりそうなコクと後味の良さがいい。
「シュール、かわいそう。みんな、食べてる、見てるだけ」
『しょうがないよ。もう慣れた』
「全然、気付かなかった」ロイが、やばい、という顔をすると「鈍感」感情のない言い方で言われると、かなり冷たく感じる。
「申し訳ない」マーティが謝ると『いいよ』そんなに気にしていないシュール。
「いいんだ」聞きとめるロイ。
『ロイはダメ』
「なんで」
『謝らないから』
「……悪かった」
「シュール、言うこと、すぐ折れる」
「機嫌を損ねるとあとが怖いからな」
「そう思うんだったら、ここで言うなよ。聞いてるんだぞ」ロイが小声で注意すると『くらげマァティ』ドスの入ったシュールの声が響く。
食後のコーヒーはこんなものだろうという味だった。もちろん、チェックは怠らない。
その後、翌日の出発時間を確認すると、それぞれの部屋へ戻った。
次の日も良い天気。
そして、ツインズムーンフェスティバル当日でもある。
三人は午前八時に朝食を取り、九時にホテルを出た。
今度はマーティが運転する。
外は相変わらず銀世界。
目的地に着くまでの間、ロイとマーティがそれぞれ住んでいた星のことを話すと、氷の世界しか知らないアニスは、感情のない話し方を気にしながらも、あれこれ質問していた。




