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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
102/1021

4 アイスドール

 

 外へ出ると、二人はレンタカーを借りにメインストリートへ出た。


 ここは専用車でしか移動できないので借りる人が多く、当然、レンタカー屋もたくさんある。

 しかし、昨日借りたレンタカー屋は、全部レンタル中でないと断られてしまった。


「仕方ない。ほかの店を当たろう」


 別のレンタカー屋へ行くが、このあと回った数件すべて、ないと断られてしまった。


「昨日の車、返すんじゃなかった」ガッカリするロイに「いまさら言っても始まらん。とにかく、借りられるまで、手あたり次第、当たるしかないだろう」



 次のレンタカー屋が見えてきたとき、後ろから来た女性がロイに紙切れを渡していった。


『ロイ、何をもらったの?』見ていたシュールの声を聞いて「どうした?」ロイを見ると「これを貰った」掌大(てのひらだい)の紙を見せる。


 その紙にはこう書いてあった。


「あなたたちは付けられています。この先の路地を左に曲がったら、ティーカップの看板が掛かっているお店があるので、その中に(かく)れてください」


 紙を(たた)み「どうする?」マーティを見ると「ここで(さわ)ぎを起こしたら余計に時間を食う。俺たちには時間がないんだ」


「じゃあ決まり」


 二人は路地まで歩き、角を曲がると走りだした。



 指定の看板を見付けると、店は空き家でドアの鍵が開いていたので中に入り、息を殺して外の様子を伺うと、数名の走る音が聞こえて去っていった。


「行ったか?」ロイが外の様子を(うかが)っていると「誰だ!」マーティが後ろへ向けて銃を構える。


 すると、奥の部屋から出てきたのは、フードを被った小柄な女性だった。


『さっき、ロイに手紙を渡した人だよ』

「君か」マーティの銃を押さえ「助かったよ。ありがとう」お礼を言うと近づいてくる。


 フードのせいで顔が下半分しか見えないが「無事、良かった」と言うので「よく僕たちがつけられてるとわかったね」


「レンタカー屋、あなたたち、ずっと見てた。その後、あと、つけてた」

「そんな所から僕たちをつけてたのか」


「あんたもつけてたんだろう?」

「声、掛けられなかった」


「なるほど」

「で、どうして僕たちを助けてくれたんだ?」


「剣持ってる、あなた尋ね人、ロイ。ペンダント持ってる、あなた、第一の門、キーマン、マーティ」

『なんで知ってるの!』思いもよらないことを聞いて大声を出すシュール。


「どこかに名前が書いてあるか?」ロイに聞くと「名札なんか付けてないぞ」目の前の女性に「どうして僕が剣を、彼がペンダントを持ってるとわかるんだ? 君は誰なんだ?」


「私は……アニス」


『エエッ! 本当?』シュールは驚くが「君がアニス?」ロイは怪訝(けげん)な顔をする。


「なぜ俺たちがアニスという女性を(さが)してると知ってるんだ?」マーティが探りを入れると「その質問、あとで、答える。来て」彼女は(きびす)を返し、裏口から外へ出ると裏通りを歩いていく。


「さっきの奴らに見付からないか?」ロイが辺りを(うかが)うと「こんな、裏通り、滅多に、入って、こない」



 彼女は裏路地を何回も曲がり、突き当りまでいくと、右側の古いアパートへ入っていく。


 どうやら二階の角部屋が彼女の部屋らしい。

 中に入ると、暖房が点いていて暖かかった。


「後ろ、ハンガー、使って」壁に掛かっている数本のハンガーを指すとマントを脱ぐ。


 彼女はスカイブルーの髪をボブカットにした、群青色の瞳をした女性だった。

 そして、肌が異様に白い。


(まるで氷の妖精だな)と思っているロイに「コーヒー、飲む?」と聞いてくるので「エ?ああ」返事をするとキッチンへ行く。


『ねえ、あの人、変な聞き方するね』小声で話し掛けてくるシュール。『普通、コーヒーでいいかしらって聞かない?』


「それは気になった。まるで、僕たちのことを知ってるような口ぶりだからね」

「知ってるんだろう。名乗らないのに、俺たちの名前や持ち物を知ってるんだぞ」

「そうだな。何者かわかるまで、用心したほうがいいな」


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