46-3 「水の宮殿」のクララ
「ところで、「ディア・マレ(海の女神)のラクリマ」も、もしかしてクララが作ったのか?」ロイが仕切り直すと『はい。水鏡の水を結晶化させて、雫型にしたものです』
「ディア・マレ(海の女神)のラクリマ」は縦十五センチくらいある雫型をした水色の水晶で、二番目の「氷の炎の門」から入る「氷晶の門」の中にある、次のアイテムを取るために必要なアイテムである。
「なんだ、どっぶり俺たちの旅に関わってるんじゃないか。しかも、俺が担当してる「大地の門」の、あの「鏡の泉の門」の製作者だと?」
「先代の管理者とか、関係者からそれらしいことは聞いてないのか?」
「第一候補の門の管理者は俺じゃないからな」
「ああ、そうだった。行方不明の第一候補はどこに行ったんだろうな」
「この旅の途中でわかるかもしれないとは、少し思ってるけどな」
「そうだよな。それにしても、こんな手回しがあったなんてな」
『ほかの門も、同じように誰かが作って管理してるのかもね』とシュールが言うので『あいにく、他の門については知らないので正確ではないのですが、どなたかが管理されていると思います』ナオが遅くする。
「ここから進めたらの話だが、各門の製作者が順番に出てくるのかもな」
「縁起でもないこと言うなよ。絶対ここから出るんだ。この艦に乗ってるのは、僕たちだけじゃないんだから」
『そうだよ、マーティ。変なこと言ったら、おやつ抜きにするからね』シュールも注意すると「もう一度言ってみろ」額に青筋が浮きでるマーティ。
「シュール。今それを言う必要はないと思うよ」ロイたちを苦しめる禁断の言葉に、表情が険しくなる。
『だって! マーティが縁起でもないこと言うんだもん!』
「現在の状況を言ったまでだ。ウソではないだろう?」
『だからって、口に出して言うことないの!』
「……悪かった」
「ああ、話を元に戻そうか」聞きたくない言葉が頭の中でリフレインするのを、止めるようにロイが話し掛ける。「クララは、水鏡に映った襲撃者を目撃したんだよな。それで、どんな奴だったか話してくれた?」
『はい。今まで会ったことがない者だったと言われてたのですが、身にまとうエネルギーが尋常でなかったそうで、何者なのか、お調べになっておられます』
「……そうか」ロイは俯いてしばらく考えると「まだまだ聞きたいことがあるが、今、一番知りたいのは、襲撃者がいつ、どうやって動きだすかということだ」
『それが、クララ様が最後に言われたことなんですが……』
「エッ、なに?」
『実は……私が話し終えた後……エアポート近くの商業都市で爆発が起こり、破壊工作が始まると……』気まずそうにナオが答えるので「なんだって?」聞き返すロイとマーティ。
『なので、私が戻るための「妖精の道」は、これで無くなると……』と言った途端、
ドーン! ドーン! ドーン!
と、爆発音が連続して聞こえ、振動がエアポート全体を揺らしはじめる。




