45-2 使者
「なんでそんなことを、聞くんですか?」戸惑うナオ。
「今の状況を把握するためだよ」ロイが答える。
「君の夢の話を聞いて、これからここは戦場のような混乱状態になると考えられるのに、君の話を聞いてから大分経つけど、何も起こらない。
タイムラグかもしれないが、それにしては時間が経ちすぎてる。
確かに何者かが来て破壊工作らしきことをしたが、すぐになりを潜めた。
そこに作為を感じるから、なにが起きてるのか確認したいんだ」
「俺たちに何をさせたいのか、教えてもらわないとな」とマーティが言うと、ナオは表情を緩め「もうバレてしまったんですか?」苦笑して頭をかく。
「君は何者なんだ?」改めてロイが聞くとナオは姿勢を正し、『私は、「水の宮殿」に勤めていた補佐官の息子です』
「「水の宮殿?」それって「幻想の星」の「時の宮殿」がある精霊界で、三枚目の鍵が保管されてた、「破壊の女神」たちに襲撃されたところだろう?」
『そうです。私は「水の宮殿」の管理者であるクララ様の使いで参りました』
「クララの! 彼は無事なのか!」
『はい。「破壊の女神」たちに見つかる前に、秘密の通路を通って避難されました』
「そうなのか……よかった……心配したんだよ」
『「尋ね人」たちが心配されているだろうと、お気になられていらっしゃいました』
「それで、クララは今、どこにいるんだ?」
『申し訳ございません。それはここでお伝えすることができないのでございます』深々と頭を下げるので「いいよ。彼が無事だということが聞けただけで十分だ」慌てて言い返す。
「それで、どうして俺に近づいてあんな話を聞かせたんだ?」マーティが聞くと『あなたにお話ししたことはウソではありません。クララ様が水鏡を使って、未来を見たことでございます』
「未来を見る水鏡? もしかして、バーネットたちが言ってた「大地の宮殿」にある水鏡が、確か「水の宮殿」の責任者である、フォンスとかいう古代神から貰ったものだと言ってたが」記憶をさかのぼるマーティ。
『はい。真水の古代神であるフォンス様が、「大地の宮殿」の管理者であるワームウッド様に、誕生日のプレゼントとして差し上げたものと同じものでございます』
「さっきまでのナオと別人のようだな」
『最初は素の状態でいけと、クララ様より言われておりましたので……』
「じゃあ、さっきまでのナオがいつもの状態なのか。では、素の状態で話せ」
『しかし……』
「僕も堅苦しいのは苦手だから、普通に話してくれるほうが話しやすいし、聞きやすい」
『はあ……』
『そんな堅苦しい言い方なんかしてる場合じゃないでしょう! サッサとなんで来たのか話してよ!』まどろっこしい進み方にブチ切れてしまうシュール。『危険な状態なことに変わりはないんでしょう!』
「シュール。みんなわかってるよ」ロイが窘めるが「回りくどい言い方はなしで、率直に話してくれないか?」笑顔を引っ込めて聞く。




