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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
十三章 老い先短い星
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43 知らない顔

 

「あのバリエガータでさえ、相手の攻撃を回避することができなかったらしい。召喚者のほうが上手だったようだ」


「それで、バリエガータはどうなったんだ?」


「コモンの話では、寸でのところで意識だけは攻撃をかわすことができたが、体は吹き飛んでしまったそうだ」


「……なんだって?」苦渋の表情をするマーティ。「では、バリエガータは、元の姿に戻れないのか?」


「元の姿に戻せるかどうかわからないが、バリエガータの意識が「冥府の宮殿」に戻ってるそうだからコモンも戻ったんだ。戻るとき心配するなと言ってたから、こっちへ戻ってきたときにどうだったか聞こうとは思ってる」


「……それでは、俺たちは無抵抗の状態にあるということか?」頭を抱えるマーティ。


「いや。コモンが、ワームウッドが召喚した「守護の女神」たちを、助っ人として行かせると言ってた」


「「守護の女神」? 確か、ルーがいる「西の塔」の警備として残すと言ってなかったか?」


「ああ。その二体をここへ寄こしてくれるそうだ」


「寄こしてくれるのはいいが、俺たちはサチェルドス・デイ(神の巫女)たちと会話することができないんだぞ。どうするんだ?」


「ああ。通訳として、ルーが一緒に来てくれるそうだ」

「それはダメだろう? 「時の宮殿」に責任者がいなくなるじゃないか」


「どの塔にも補佐役がいて、代わりに対応してるから大丈夫だそうだ」

「だからと言って」


「ルー自ら申し出てくれたそうだ」

「エエッ?」


「とにかく、どんな手を使っても、この星から出るんだ」

「……ああ、そうだな」


「たぶん、ルーたちはすぐに来てくれるだろう。そうなれば、少しは時間が稼げる」

「……まだ、抵抗できる術があるというわけだな」


「今は戦うことがメインじゃない。星からの脱出がメインだ」

「そうだな」頷くマーティが、考えながらチョコクッキーをほおばる。



 二人のやり取りを間近で聞いて、アニスとバーネットは口を挟むことができなかった。


 マーティもロイと同等に分析して意見を返すため、二人の会話に入っていくことができないからだ。


(二人とも、私が知ってるロイとマーティじゃないみたい。あんな顔、見たことない。知らない顔してる)


(もう一つ、顔。責任者、顔)


 そして、バーネットが持つバラのペンダントヘッドを通して二人の会話を聞いているリシェルも、これからの行動について考えを巡らせ、まとめると「ロゼア。「お医者のお姉ちゃん」と「声のお姉ちゃん」を助けるために、もう少し頑張れるかな?」声を掛ける。


「復讐の女神」たちと一緒にいる黒いフードをかぶったロゼアは『この星から出たら、またロゼアと遊んでくれるかな?』と聞くので「きっと、たくさん遊んでくれるよ」と言うと『ロゼア、頑張る!』


 そんなロゼアの後ろで、「破壊の女神」の召喚者を捕まえたくてウズウズしてる黒いフードをかぶった「復讐の女神」の鞭を持つアエムルスが、『ヒャアア(まだダメ?)』と言ってくるので「ノンドム(まだだ)」と返すと、プイッとソッポを向く。


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