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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第四章 「第二の門 / 氷の炎の門」
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2 不意打ち

 

「ここでドライブはしたくないな」運転しているマーティがぼやく。


 一面真っ白な世界。


 最初は見慣れない光景を楽しく(なが)めていたが、ずっと同じ景色なので、()きてくると眠くなってくる。


 短剣の大きさになって、ロイの防寒具の内ポケットに入っているシュールも、最初は(うるさ)いほどはしゃいでいたのに、しばらくすると静かになったので、眠ってしまったのだろう。


 その眠さと戦いながら訪ねた二人は別人だった。


「ついてないな。頑張(がんば)ってここまで来たのに」サクサクと柔らかい雪を()む。


「そう言うな。あと二人に(しぼ)られたんだ」タブレットに表示されている住所を見ると「明日のことを考えて、今日は途中のこの町まで戻って一泊するか」


 ところが、車を走らせてすぐにロイの携帯が鳴り “ロイ! マーティ! すぐ戻ってきてよ!”エルの緊迫(きんぱく)した声が飛び込んでくる。


「どうした!」

 “電気室で爆発が起こったんだ!”


「何だって! ケガ人は? 艦は無事か?」


 “艦は無事だよ。ケガ人が数名出たけど、みんな軽傷で済んだ。今、原因究明に当たってるけど、相当ひどくやられてるんだ”


「わかった。これから戻る」



 艦には午前一時過ぎに着き、帰りを待っていたエルと一緒に電気室へ行くと、ものの見事に黒()げになっていた。


 焦げ(くさ)い匂いが(ただよ)う中「原因は?」ロイが口を押えて聞くと「精工(せいこう)にできた爆発物によるものだったよ」後ろにいるエルが答える。


「爆発物?」振り向くと「だから警察に届けたよ」

「で、警察はどう言ってるんだ?」


「プロの仕業だろうって」

「犯人の目星は?」


「まだわからない」

「とにかく、検分は終わったんだろう?」マーティがエルを見ると「さっき終わったよ」


「では、手を付けていいんだな」

「こっちでも一通り調べたから」


「あとで調書を見せてくれ」

「用意してあるからメールする。じゃあ、これから修理に入るよ」


 外で待機していた修理班と入れ違いに出ると、作戦会議室へ向かった。



 エルから送られてきた調査内容に目を通し、マーティに「どう思う?」と聞くと「例の追っ手の仕業じゃないかと言いたいんだろう?」


「ああ」


「どちらの調査内容を見ても手掛かりなし。警察が言ったとおり、プロの仕業に違いないな。しかも相当の手練(てだ)れだ」


「とにかく、各部署に警戒を厳重(げんじゅう)にするよう通達を出した」

「相手がどんな奴か今の時点でわからないから、敵の出方を待つしかないか」


 そこへ、エルが二人に眠気覚ましのコーヒーを持ってきた。


「サンキュウ」ロイがカップを取ると「どうしてこの艦が狙われたんだろう?」エルが当然の質問をしてくる。


「ある婆さんから予言を聞いた」カップを受け取るマーティに「予言? 誰なの?」


「アグリモニー星の市場で、予言者だっていうお婆さんに会ったんだよ。そのとき予言を聞いて、追っ手がいると言われたんだ」


「追っ手? 誰? どこかで追われるようなことしたの?」

「まさか。全然思い当たらないよ」


「でも、プロを(やと)うくらいだから、相当なことをしたってことだろう?」

「そういうことになるんだろうけど、心当たりが本当にないんだ」


「じゃあ、向こうが姿を現すまで、誰かわからないんだ」困った顔をするが「とにかく、長距離を走ってきたから疲れただろう? 少し休んでよ」と話を打ち切る。



 会議室から出るロイとマーティは、話をしながら自分たちの部屋へ向かった。


「エルは、親父さんに予言者が付いてることを知らないのか?」

「ああ。知ってるのは、側近クラスの数名だけだよ」


「そうなのか。(あや)うく話してしまうところだった。すまん」

「いいよ。知らなかったんだから。それにしても、こういう方法で来るとは思わなかった」


「まったくだ。修理にどれだけ時間が掛かるか」

「足止めか」


「動けなくして叩く。ゲリラのやり方だ」

「ゲリラ……そうなると、思い出すのは……」


「奴らしかいないだろう」

「しかし、奴らは(つぶ)したはず」


「追って来れないようにしただけだ」

「……どうする? すでに潜入(せんにゅう)してるかもしれないぞ」


「まだハッキリしてないから下手に動かないほうがいい。もし奴らだったら、狙いは俺たちだ」

「そうなると、ここで話すのはまずいな。僕の部屋へ行こう」



「情報が少ないから、状況が(つか)めないな」ロイが居間のソファに座ると、向かいに座るマーティが「俺たちは艦から離れたほうがいい」


「もし奴らが潜入してたら、艦を占領されてしまうぞ」

「そうか。だが、まだ奴らだと決まったわけじゃない。可能性の一つだ」


「そうだな。とにかく、追っ手が誰なのかわかるまで、警戒を厳重(げんじゅう)にするしかないな」


 マーティはロイの部屋で寝ることにし、体を休めた。


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