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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第一章 旅の始まり
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6-1 事前準備

 

 地下駐車場に車をおいてセキュリティゲートを通り、エレベーターホールへ行くと「お帰りなさいませ」ニネが待合所のソファから立ち上がる。


「持ってたのか?」青白い顔を見て「無理するなと父さんに言われてるだろう」

「こんな大事なときに、休んでなんかいられません」


「体調を治すほうが先だろう。部屋へ戻れ」エレベーターのボタンを押し、ニネを押しこむと「あの、カウスネクト様から(ことづけ)を預かってます。お帰りになったら執務室(しつむしつ)へ来るように、とのことです」


「父さんも起きてるのか? 困った人だな。わかった。ありがとう」

「では、お先に失礼します」

「ああ、お休み」ニネを見送ると、隣のエレベーターで執務室へ向かう。


 ドア横に付いているインターフォンを押し「僕です」と言うとドアが開くので、中に入ると奥の執務室へいく。


 カウスネクトは執務机でタブレットの書類に目を通していた。


「休んでなかったんですか?」


「ニネから事情を聞いてね。明日出発だろう? お前はいろいろと準備があるだろうから、他の手配をしておこうと思ってね」


 書類は出発に関しての手配書だった。


「そのくらいできますから」

「最新鋭の大型戦闘艦を動かすために、どのくらいの手配が必要か知ってるか?」


「それは……」

「幸い試運転する予定で準備を進めてたから、それを本運転に切り替えるだけで済んだ」


 タブレットのデータを上書き保存すると机上(きじょう)の呼びだしボタンを押し、秘書が出ると「例の書類にサインしたから、内容を確認して各部署へ回してくれ」


 返事を聞くと、タブレットの電源を切って背もたれに寄り掛かる。


「父さん、無理しないでください」


「大丈夫だ。それより、旅に出ることになるとニネから聞いたときは驚いたよ」執務机の前のソファに移動し、向かい合って座ると「急な出発になりました」


「長旅になるらしいな」

「そのようですね」


「こっちのことは心配しなくていい。近隣の系星が、星ごとに住民を受け入れてくれることになった。私たち政府関係者には宇宙管理局が居住ステーションを貸してくれることになってね。解決するまで、しばらくは宇宙暮らしだ」


「そうですか。なるべく早く戻ってこれるように努力します」

「焦らなくていい。無理せず、無事に戻ってこい」

「はい。気を付けます」


「それと、先ほど宇宙管理局の薬学局の人達が見えて、例のウイルスのことを調べてたんだが、やはり新種で、即効性(そっこうせい)を持ってる危険なものだと言ってたよ」


「まったく、どこのどいつがあんなものを造ったんだ?」

「こんな短期間でワクチンを作れたのは奇跡だとも言ってたよ」


「それは、不幸中の幸いですか」

「そうだな。とにかく、特別調査チームがきて、徹底的に調べるそうだ」


「犯人捜査のほうはどうなってるんですか?」


「こちらは、宇宙警察局が捜査チームを発足して協力してくれることになった。近いうちに捜査員を何名か派遣すると連絡がきてる」


「そうですか。早く逮捕してもらいたいですね」

「ところで、お師匠様の話はどうだった?」


「実は」ニネが話してくれた口伝は本当だったこと。

 アミークスと呼ばれる人物は実在するが、存在を明るみに出してはいけないこと。


 お師匠様にもらった浮遊能力のことを話し「この剣を一緒に持っていくよう言われました」テーブルに置くと「これは見事な剣だ。こんな細工は見たことがない」手を伸ばすので慌てて止め「この剣は持ち主を選ぶんだそうです」


「選ぶ? どういうことだ?」

「お師匠様の話では、この剣は意思を持ってるらしいんです。そして、持つ者を選ぶそうです」

「では、選ばれなかった者が持つとどうなるんだ?」


「わかりません。(こば)まれたとき、どうなるか聞かなかったので。でも、もしここで父さんに何かあったら、大変なことになります」


「……わかった。残念だが仕方ない」


 ロイが剣を取って身に着けるのを見て「お前は選ばれたということか?」

「そうらしいです」

「そうか。まあ、前進してるんだ。良しとしよう」


「では、これから準備を始めるので、部屋に戻ります」


 執務室から出ると自分の部屋に戻った。



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