短編 深夜・更衣室・錆
深夜・更衣室・錆
を使ってなにか制作します。
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突然鳴り響いた警報音で脳が覚醒する。滅多に鳴ることの無いアラートに心臓が跳ねたが、マニュアル通りに行動を始める。監視カメラの確認、警報のリセットと装備の確認。警棒の出番となることは勘弁願いたいが、いざとなれば振るわなければならない。ドアの施錠を確認し警備所を後にする。
感知したのはプールサイドの一角に備え付けられた赤外線センサーで、ここからは走れば2分少々だった。走り出しながらLEDライトを点灯させる。今日は月も出ているため視認性は良い。全力疾走へと切り替え、中庭を通り抜け、プール前へと到着した。軽く呼吸を整えるとフェンスの錠前と警備システムを解除し、中を確認する。フェンス越しに見ていた時点で何もない事が分かっていた。鳥や野生動物――たまに出るアライグマか狸のような四足の動物がセンサー前を横切っただけだろう。念の為ぐるりと紅葉の葉が散るプールサイドを歩き、プール内に潜入者が居ないことを確認する。
マニュアルに従い再度の施錠と設定を行い、隣接する更衣室へと向かう。南京錠を外し内開きのドアを開ける。
時期外れの為、室内はやや埃っぽい。開け放たれたドアから入る月明かりにより明るさは確保出来ているものの、LEDライトをかざしつつ警棒をいつでも振れるよう伸ばす。人の入れるサイズである用具入れを確認するも、清掃用の道具以外には何も入っていない。シャワールームも同様に確認していく。
「誰かいるのか!」
誰も答えるはずがない。上下の空いたドアを開き、中をライトで照らす。やや古さを感じるシャワー以外に何もない。高い位置にある換気用の窓も施錠済みである事を確認した。ここまではマニュアル通りだ。最後にLEDライトで室内をぐるりと照らすと、何か排水溝に赤黒いものが付いているのが見えた。
身が強ばる。一体何が付いているんだ……恐る恐る排水口の上を白手袋でなぞると、それは赤錆だった。軽く制服のズボンで擦り付けるように払う。安堵感に胸を撫で下ろす。ビビリと言われる事はあるが、確かにそうかも知れないな。更衣室のドアを開け南京錠を元通り閉め直す。
ふと、ドアをもう一度見るが当然ながら中は見えない。
マニュアルの手順が一通り完了したことを確認し、警備所へと戻ることにした。
破綻しない文章の練習。主人公の緊張感を伝える為にはまだまだ言葉が足りない。