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俺、今日の仕事が終わったらリア充に生まれ変わるんだ・・・。

「それでさぁ、そのボスキャラが、チョー強いわけよ。 だからメルちゃんも手伝ってくんない?」

「いえ、結構です。 私は雑魚とは群れない主義なので」

「うはぁ、手厳しい! でもそれってつまり、俺っちが雑魚じゃなくなったら一緒にデートも考えてくれるってこと?」

「はあ・・・。 まあレベル150以上になるか、ユニークスキルの一つでも持っているならパーティーを組むことも考えますが・・・」

「150!? そりゃ確かにメルちゃんはレベル200の最強戦士だけどさ、俺なんてまだレベル70だよ? 幾ら何でもそりゃないって!」


 会社の昼休みに、こんな会話が聞こえてきた。

 話のネタは、昨今話題のフルダイブVRMMORPG−−アナザーワールド−−のことだろう。

 ちなみに話の中で『メル』と呼ばれているのは去年入社したばかりの女の子だ。 もちろん『メル』というのはゲーム内のキャラクターの名前で、本名は全く違う・・・、はず。 いや、話したこともないから名前も覚えていないんだけど。

 で、その彼女(メル)に足蹴にされているのは俺の上司でもある40過ぎのおっさんだ。

 俺の上司も、仕事はできるし悪い人じゃないんだけど、こんな光景を毎日のように見せられていては、流石に威厳もあったもんじゃないというか・・・。


 ちなみに二人とも、アナザーワールドは発売日からプレイしている、いわゆる『最古参』というやつらしい。

 二人とも始めた時期は同じはずなのに、かたや『ゲーム内のトップランナー』で、かたや『乞食プレイヤー』。 たった半年でここまで差が開いたのはメルにゲームのセンスがあったからなのか、あるいは上司にセンスがないだけなのか・・・。 まだアナザーワールドをプレイしていない俺にはわからないけど、きっとその両方なのだろう。



 ・・・そう、実は俺はまだ(・・)、アナザーワールドをプレイしたことがない。

 なにせ最新のVRゲームということで、ゲームをプレイするためには数十万円もする最新のハードが必要だったのだ。

 しかもアナザーワールドの発売と同時に需要も一気に増え、気付いた時にはどこを探しても売り切れ状態だったのだ。

 それでもなんとかソフトとハードの同梱セットの予約券を抽選で引き当てて、アナザーワールドの発売から半年経った今日、ようやく我が家にも憧れのVR端末が届くのだ!


 うちの会社には、アナザーワールドのプレーヤーがメルと上司以外にもたくさんいて、サークル活動も展開しているみたいだが、俺はまだ彼らにこのことは伝えていない。

 どうせ「俺も始めました」と言っても、今更感があるし、何より古参勢からすると、低レベルの新参が入ることで迷惑に思うかもしれない。 と思ったからだ。


 都合のいいことに、明日からは3連休が始まる。

 今日帰ったら徹夜でプレイして、連休明けに「XXレベルまで上げたんで、仲間に入れてくれませんか?」みたいに言えたら、それがベストじゃん! それかせめて俺の上司みたいに「最近始めたんですけど、XX倒すの手伝ってもらえませんか?」ぐらいは言えるようになりたい。


 はい。

 正直に白状すると、単に断られるのが怖いだけです。

 あとは、最初のチュートリアルすら知り合い任せにしてしまうと、しがらみとかがありそうで・・・。


 いいよな、リア充は。 気軽に誘ってもらえる友達がいて。


 っと、いけないいけない。

 俺はVRデビューを見事に果たして、リア充(あいつら)の仲間入りを目指しているんだった。

 (連休明けには俺もリア充。 連休明けには俺もリア充・・・)

 ふう。 なんとか落ち着いた。 ダイジョウブ、リアジュウ、ミカタ。 リアジュウ、コワクナイ・・・。


 とにかく!

 そのためにもまずは今日、一秒でも早く帰宅して、一刻も早くキャラクターのレベルを上げなくては!!!

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