その九「指向性」
では、成果を発表しよう。
Cクラス、16人。
Eクラス、14人。
の計30人の大成果である。
体調は大丈夫かと心配したけど、彼らからすると実験がなくむしろ体調が悪い者から優先的に治療を受けているらしくいつもより体調に関しては良いらしい。
このまま数日もすればほとんどの人は快復してしまう状態らしく、本当に一部の間の悪い人以外は自由に動き回ることが出来るとのこと。
僕としても身体の動かない人を無理矢理連れてくる気はしないため一応、管理責任者のクロードに確認を取りに行ったら現在ベッドから動くことが出来なくても希望があるなら後日快復した後に送り出すことをしても良いとのこと。
ちなみに病床に臥せっている人たちに関してもそれなりに来てくれると約束してもらえているが可能性の話なので数には数えないことにして、今作っている名簿にその他欄を作って番号を記しておく。
「うーん、わかってたけどユニットクラスの人たちの反応は薄いなー。」
人体実験なり、投薬実験を受けていた人たちに関しては良い反応をくれる人たちがいた。
彼らは僕たち以上に非人道的な行為を日常的に行われていたのだから、それはわかる。
問題はBやDといった僕やお姉ちゃんのような情報を処理したり解析するクラスの人たちだ。
そちらは実際に死ぬなんてことは少ない。
たまに電脳空間で遭難して廃人になったり、脳が負荷に堪えきれずにショートして使い物にならなくなってしまうくらいである。
あれ、これはこれで酷いね?
ちなみに僕やKのようなクラスは所謂成功体といって適性が高かったりある一分野に突出しているのがわかるとB、Dクラスのナンバーが外されて適正の高い該当クラスに割り当てられる。
例外としてAクラスはマザー特有なのでAの文字を持つのはお姉ちゃんのみのはずである。
あぁ見えてすごく優秀なのだ。
「どうかしたのかね、愛しのJ君!悩んでることなら何だって聞いて上げるよ。さぁお姉ちゃんに聞いてみな。」
なんだかんだと落ち着く場所だからとこの部屋を使っていたのが悪かったかも知れない。
突如沸き出るように現れたお姉ちゃんは相変わらずのテンションで話し掛けてきてちょっとウザい。
「別に悩んでるというか…。やっぱりB、Dの人たちは来てくれないなーって。」
「そりゃあ彼らは危険を犯す必要がないからね。彼らが自らの欠陥を認めない以上、こちらに来ることはないよ。」
まるで、僕たちのクラスは欠陥だと言わんばかりの言い様だ。
お姉ちゃんが、Aが、クローンであるクラスの人たちをそんな風に言うなんて思いもしなかった。
「欠陥って…、それ僕にもあることなんじゃないの?」
「それは違うよ。彼らは排他的で、ヤな言い方をすればエリート思考なんだ。だから彼らは私たちのことを成功体でありながらその地位から落とされた敗北者だと思っている。そりゃあ話なんて聞かないさ。」
確かに彼らの態度は少し違和感がなかったわけでもない。
僕らに植え付けられた意識というものは長年培ったものでもなく、半分は仮初めの情報体だ。
ただ、昨日今日と色んな人たちと話していてクラスによって、その方向性がある程度違うことに気づいた。
Gクラスの人たちはより俗的で、親しみやすく本当に人間を相手にしているようだった。
C、Eクラスの人たちはその身体に似合わぬ意思の強さを持ち、外の世界に憧れていた。
そして、僕たちのクラスは…。
確かに決めることが怖いのもあるかもしれない。
わざわざそちらに行けば死ぬと提示された場所に強制的に送られる人など彼らからすれば嘲笑すべき対象になってしまっているのかもしれない。
そりゃあ耳を貸す事もないよね。
あ、少し悲しくなってきた、
「よし、お姉ちゃんが今からソイツらを殴ってくるから待ってて!」
「えっちょちょちょっ、タンマタンマ!!ダメだから!そんなことしたら余計に話聞いてもらえないから!!」
袖を巻くって意気揚々と出ていこうとするお姉ちゃんを必死で止める。
止めなきゃホントに殴りに行きそうだ。
というか、絶対に行くし事件になる。
「むぅ…J君がそういうのなら止めておこう。」
叱られた犬みたいにショボくれ止めてくれたのはありがたいのだけどどうして僕を抱きしめるのか。
なんかそんな流れには見えなかったのだけど、単純に僕に抱きつきたくてやったんじゃないだろうか。
この姉ならあり得る。
それだけ片寄った思考になってしまっているなら多少は仕方がない。
気長に、と言うほど時間はないのだけれども地道に話を聞いてくれる人を探してみるしかない。
例えばKみたいな…。
「あれ、そういえば。」
「どうかしたのかい?」
お姉ちゃんにモフられる中、ふと違和感が湧いた。
確か、Kはあのクラスには珍しくこちらに友好的だったような。
それを個性として言って良いのだろう。
他のKクラスも態度はB、Dと一緒だった。
つまり他の人と同様に選民的な思想を植え付けられている上での彼女の行動は…。
だって彼女は自分の意思で僕たちに対しても変わらない態度をとっていたんだ。
それってつまり、
「ねぇ、お姉ちゃん。僕たちのクラスの中で他のクラスとも平等だってわかってる人っているのかな。」
「どうだろうね。いたとしたら中々の切れ者か、自分をしっかりと持つことが出来た子なんじゃないかな。」
「そういう子がちょっと喋るのが苦手だったりするだけで不調なんて起こしてると思う?」
「それはないね。もし不調だって言うならそう判断したヤツがおかしいのさ。ちなみにその子は誰なんだい?」
自然とお姉ちゃんを抱き締める手に力が入ってしまった。
やはり思っていることは正しいのかもしれない。
彼女のような人がエラー判定をもらっているなんて考えられない。
「K-01、あの子やっぱり……。お姉ちゃん、ちょっと行ってくるね!」
ざわりと胸騒ぎがした。
生態的に、虫の知らせや第六感なんて信じる事はないけれど、今はとにかくKのことを探さなければならないと思ってしまった。
そうしなければ僕はきっと後悔してしまう。
どこにいるかはわからないけど、検査をすると言った以上ある程度の予想は着くんだ。
止まっている暇なんてない、急がなくちゃ。




