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プロローグ

「……──あ…、ぅ…」


話そうにも言葉が出なかった。

それはそうだ、ボクは元々話すという機能がない。

本当なら今こうやって目的を持って歩いている事すら現実的ではないのだから。


だけど、誰かから呼ばれてしまった。

きっとそれは目の前のカプセルでボクを見下ろしている少女がそうなんだろう、声も聞いたこともないがそう確信している。


「…、っ! キミ……は?……」


息をするのはこんなに大変なものだったんだと初めて知らされる。一言発しようとするたび使われなかった喉と声帯が引付けを起こしたような張り付く感覚がする。


それでも言葉に出さなきゃ行けないと思い、虫の泣くような声で言葉を吐き出す。

なんとか言葉にはなったようだ。使っていない機関を突然使おうとしてもやはり上手くは行かないらしい。


蚊の鳴くような声ではこのカプセル越しには届かないだろう。

それでも目の前の彼女は嬉しそうに口を三日月のように歪ませ手を伸ばした。


瞬間、全ての機械たちが唐突に落ちる音が響く。

辺りをぼんやりと照らしていたのはそのコンピューターや機械たちだ。


ただでさえ薄暗く狭い視界はなくなり、廊下の電灯も全て落ち静寂が辺りを支配する。


ペタリと誰かの足の音が聞こえた。

そして、一つ、また一つとその足跡は近付いてくる。


何も見えない中でその足音だけが響きこちらに近付いて来るというだけで叫び声を上げたくなるが身体が動かない。

本能的な恐怖で竦んでいるというのだろう。

どうしようもなさと何が来ているのかわからない恐怖でどうにかなりそうだ。


ふと、自分の前で足音が止まった。

誰かがいる、息遣いが聞こえる。


ここまで近くに来れば気配くらいはわかるもんなんだなと恐怖心でどうにかなってしまったのか頭が急に変なことを考え始める。


ヒタリと頬に何かが触れる。

きっと人肌だろう。

その形から誰かの手だって言うのがわかる。


その感触を確かめるように、なにか愛おしいものに触れるように頬を撫で首筋を這い背に手が回されていく。


自分ではない何者かの柔らかく冷たい肌がボクに侵食してくる。


「ピィッ、……、──。」


誰かの顔が直ぐ近くにある。

目の前には誰が、良くないモノかも知れない。


ぎょろりとした鬼のような赤い瞳がこちらを見つめる。

何かの魔法に掛かったかのようにビクリと身体が震えるとその衝撃に耐えられなかったボクは、抗う間もなく意識を手放した。

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