かみさま
僕は神様なんだ。
毎日捧げられる沢山の供物。
温かくてふわふわの寝床。
毎日髪をとかしてくれて
自分では何もしなくていい。
自由気儘にしていれば皆が笑顔になる。
そう僕は神様なんだ。
神様なのに
どうして今はこんなにも寒いのだろう。
どうしてこんなにも痛いのだろう。
あたたかな風景は
優しい声は
どこに
ああ そうか
僕はあの大きな
人間たちが「くるま」と呼ぶものが
気付いたら後ろにいて
僕は神様なんかじゃなかった。
僕が見ていたあの風景は
本当の神様が僕に見せてくれた幻だったんだ。
僕は路地のゴミ箱で産まれて
お母さんともはぐれて
誰からも愛されず
もうずっと1人ぼっちで
「はねられてる!!」
「もう助からないよ」
そんな声が聴こえてきたのを最期に
僕の意識は途絶えた。
次に気がつくと僕の体にはチューブが沢山繋がれていて
「目を覚ましたよ」
って嬉しそうな声が聞こえて。
そして僕はー
僕は結局死んでしまったらしい。
目の前にいるおじいさんがそう言ってる。
普通はここから目を覚まして
幸せに暮らしてハッピーエンドじゃないの?
そんな風に思ったけど
世の中そんなに甘くないことを僕は知ってる。
でも僕は次の人生を生きられるんだって。
あの夫婦の子供として転生するかって聞かれたけど
僕は次こそ「かみさま」になるんだ。
だから猫のまま
僕はきっとずっとずっと猫のまま。
すべてのねこはかみさまである