訓練③
「さて…次の訓練は…」
ラミが端末を触り始める。どうやら訓練にも段階があるらしい。やっと創夢家の能力をとりあえずは扱えるようになっただけで、まだまだ訓練は山積みだろう…。
「さ、茂明君、新しい能力試そうかっ」
ラミがにっこり微笑んで元気良く言う。
「え…?能力って創夢家だけじゃないんですか?」
そう聞くとラミは自慢げな顔をして言った。
「実はね、茂明君の身体、すこしいじっちゃってるの★」
「…まあ、はい。今さら驚きませんよ」
異世界にいきなり呼び出されて、世界を救えだなんて。馬鹿げてるがしかし現実だ。今更肉体改造されても驚くわけがない。
むしろどんな能力か楽しみなぐらいだ。
「あら、そうなの。」
ラミが少し驚いた表情で言う。
「それで、その能力ってどんな能力なんですか?」
はやく能力を扱ってみたい、その好奇心で茂明は満ち溢れる。
「身体能力を大幅に引き上げる能力よ。私達は│剛迅家と呼んでいるわ。この能力によって私達は常人の│領域を越えてパワーとスピードを手に入れることが出来る。まあ、扱いはとても難しいけどね」
ラミが淡々と話し、そして説明を終える。
「とりあえず、実践ね、剛迅家のON/OFFはイメージで行えるわ。ただ、力加減が本当に難しいの、相当な訓練が必要よ。」
ラミの口調からして、相当難しいらしい、ただ聞く限りではとても強そうな能力。
茂明は自然と感情がたかぶっていた。
ラミはまた小さな岩へと向かい、腰掛けてこちらの様子をじっと見ている。
茂明はこころの中で自分に喝を入れ、マネキンへと向かう。
茂明はマネキンの10メートルほど手前で立ち止まり、剛迅家の能力を発動させる。
「ん…?」
身体に特に変化は見当たらない。ただ少し、身体が軽くなったように感じられる。
茂明は脚にぐっと力をこめる。そして100メートルだっしゅの要領で地面を蹴った刹那──
『ドンッッ…!!!』
地面から大きな音がした。
茂明が蹴った地面は吹き飛び、草花や土が空へと大きく舞い上がる。そして地面にはクレーターのようなくぼみができた。
茂明は空へと投げ出される。
「やっべ…イメージと違う…」
そう言いながら、茂明は空を飛んだままイメージを膨らませる。
落ち着いて…落ち着いて…イメージ…。
そして茂明は自分が飛んで行くであろう方向に大きなクッションを作り出した。
『ボフっ…』
クッションが音を立て、茂明をキャッチする…が、クッションが破れ、茂明は貫通する。
「勢いは殺せたか…」
そして茂明は放物線上に飛び、地面へと落下する。
ゴロゴロと地面を数十メートル転がり、ようやく茂明は止まった。
「いてて…」
茂明は震えた手を地面へと立て、ゆっくりと立ち上がる。
「茂明君大丈夫!?」
ラミが走って、茂明に駆け寄る。
「平気ですよ…」
平気という言葉を聞いて、ラミはホッとした顔をする。
「茂明君の判断見事だったわよ、あの一瞬の中で空中にクッションを作り、致命傷を避ける…。素晴らしかったわ。」
ラミがパチパチと拍手をする。
「クッションの柔らかさ、うまくイメージ出来なかったですけど…」
茂明は一度たち上がったが、脚がグラついて再び地面に倒れ込んだ。
「やっぱり剛迅家の能力は負担が大きいわね、これ以上の訓練は認めない。今日はゆっくりと休みなさい。」
「はい…」
茂明はラミの肩を借り、トレーニングルームを出た。
なげぇ。