恐怖と生命の重さ
スタイン博士の研究所から東に二キロ地点にボルト博士の研究所はあった。住みやすそうなスタイン博士のそれに比べてここは何をやっているのかという雰囲気がある。製鉄工場のような音が聞こえていた。それはまぎれもなく火花が出る兵器実験だった。台の上の人形ロボットの、手をつかみ、指から出る火器の実験をしていた。さらにライターで人形の腕をあぶったが、皮膚はやけどがなかった。
「コーティング式人工皮膚の実験は成功だ。これを使い人間を裁く日が来る。」
ヒューストンは慎重に辺りを見回して前進した。しかし鳥が飛び立ってからまるで他の動物まで気配を消したようだった。ゆっくりと登ったが、草木が動く音すらしない。その時、リスが少し先に見えた。ヒューストンは興味がわいた。
「こっちへこいといってるみたいだ。」
リスがこっちを見た後しばらくとまり足早に去った。それをヒューストンは追った。しかし追い付けずリスはすぐに見えなくなった。しかし角を曲がった瞬間、とんでもない光景にそうぐうした。それはまさしくマントヒヒかネアンデルタール人かと言ったふうぼうの二メートルはあるゴリラの怪人だった。ヒューストンは言葉がでなかった。怪人はリスを食べようとつかんだ。ヒューストンは拳銃を取りだし怪人の手に撃ち込んだ。怪人は激しく痛がり、リスを離した。
「今のうちに逃げないと!」
しかしヒューストンは足がすくんでしまった。怪人は手を押さえなから歯軋りをし、向かってきた。ヒューストンは叫び拳銃を乱射した。無我夢中だった。拳銃は雪男の毛で覆われた皮膚を貫き、肉に達した。さらにヒュートンは撃った。雪男は激しい怒りと苦しみの叫び声を上げ、そして断末魔と言える声を上げ血を流し倒れた。
「はあ、はあ。」
腰を抜かし汗まみれになっていたヒューストンだったが数分後、ゆっくり立ちよろよろと歩き始めた。そして雪男の様子を伺った。身動き一つしていない。恐る恐る触った。生きていてほしい願い。だが次に皮膚や腕そして心臓をさわり絶望に変わった。ヒューストンは心の底から怯え顔は青ざめた。事の重大さに気づいてももう手遅れだった。
「雪男を・・殺してしまった・・」
スタイン博士の家のチャイムが鳴った。のんびりとした温厚な顔と白髪、少し太った体格の中に妻を亡くした哀愁があった。
「はい。」
と答えると
「旅の者です。ご相談が。」
と答えが帰ってきた。スタインが開けるとそこには雪男を背負ったヒューストンがいた。