隠された自律回路 新たなる人格
アルドはクールでありながら瞳の奥に熱さをたたえた目で銃を構えにらんだ。キラーラビットは当惑した。
「お前は引っ込んでいろ!」
スノーボルトは叫んだ。
「アルド、私の事はどうなってもいい。先に逃げろ。」
しかしキラーラビットはスノーボルトを黙らせようとした。
「うるさい!」
キラーラビットは目からの光線を再度スノーボルトに浴びせた。
「アルド、私はここで死んでも構わん、お前はモルフェス博士を助けに行くんだ。」
「大丈夫か!」
スノーボルトは超聴力でボルトの通信をキャッチした。
「この通信ならあいつらにはキャッチされない。助けに行けなくてすまん。」
「ボルト博士、すまない、ここで私は死ぬ。」
「何を言っておるんじゃ!」
「今、アルドを人質にされている。誰かが戦わなければならないのはわかる。だが、私は人質を見捨てる生き方は出来んのだ。捜査官だった頃同じような状況が多くあった。人質を無視して攻撃する事は私には出来んのだ。」
「そうか、だがその前に逃げられるなら逃げてくれ。お前は死んではいかん。」
「しかし私が逃げたらモルフェス博士やアルドが・・」
「お主は自分の命を大事にしても構わん。」
「それは出来ない。」
「し、しかし・・命は1つしかないんじゃ。」
「構わない。」
「わかった。スノーボルトにはもう1つ隠された自律回路がある。スイッチを押すと『人間の人格ではない』スノーボルトの人格が目覚める。」
「人間でない人格?」
「ああ、機械の人格だ。そのコンピューターの人格と入れ替わるんじゃ。」
「それでどうなるんだ。」
「そいつに判断を任せる。今の君の状態ではどういう行動を取るべきかわからなくなっているからじゃ。脇腹のスイッチを押せ。」
スノーボルトはスイッチを押した。すると頭の中に無数の方程式や数式などが見えるような幻覚状態となり、目の前の物が見えなくなる症状が起きた。ペーターと入れ替わった時とは全く違い、睡眠ガスで眠らされているような感覚だった。やがてマーグの目には黒い雲の塊のようなものが見え光を発し始めた。深い眠りにおちるようだった。
「スノーボルト、オリジナルAI、キドウ」
その言葉が響き、マーグは意識を失った。兵隊はさらにバズーカ砲を撃ってきた。その煙の中からスノーボルトは姿を現した。目が黄色に光っている。
「何だあ?まだやる気か?アルドがどうなってもいいのか?」
その瞬間スノーボルトはジャンプしてアルドの近くに着地し、捕まえている兵士の一人を手刀で気絶させ、早く動いてもう1人を気絶させアルドを解放した。キラーラビットは驚きあわてた。
「貴様、自分はどうなってもいいんじゃなかったのか!」
「必ず人質は助けて見せる!」
そこにはハンザ・ペーターともマーグとも明らかに違う、もう1つの人格の姿があった。
遠くでヒューストンは聞いた。
「と言う事は、その人格は人間の脳波をプログラムしたものじゃないんですか?」
「ああ、正真正銘機械の人格だ。」




