驚愕の多重人格プログラム
ヒューストンは基地に行く用意が出来た。
「よし、行くか!」
はやるヒューストンをスタインは制した。
「待ちなされ、猟銃と防弾チョッキだ。まさか完全丸腰で行く気かね。」
「はは・・」
ヒューストンは無鉄砲ぶりを指摘され恥ずかしがった。その時だった。
「うっ!」
突如スノーボルトが腹を押さえ膝をつき、さらには頭を抱え掻き毟り苦しみ始めた。
「う、ああ!俺の人格・・」
皆はあわて、ヒューストンが話しかけた。
「人格がなんだって、どうしたんだ?」
「うっ、うっ!」
スノーボルトは変なものを食べて嘔吐しようとしている患者の様になった。ついに四つん這いになった。
「はあ、はあ・・」
スノーボルトはまるで何かと戦っているようだった。その状態はだんだん弱まった。
「お、おい・・」
ヒューストンは恐る恐るスノーボルトの肩を叩いた。すると意外な答えが返ってきた。
「大丈夫です、やっと表に出られた・・」
口調やしゃべり方が変わっている事に皆は驚いた。
「です?表に?」
スノーボルトは皆に向き直り姿勢を正し、今までとはまるで違う落ち着いた話し方で話し始めた。
「私はスノーボルトにプログラムされた最初の人格、FBI捜査官のマーグ・ロックです。」
「ええ?」
1同は事態を呑み込めなかった。ボルトは驚いた。
「そんな事儂も知らんかったぞ!さっき脳波を調べた時は検出出来なかった。」
スノーボルトはさらに冷静に説明した。
「私は雪男達によってこのスノーボルトの体に脳波をプログラムされていたのです。ところが、本来悪人のプログラムを入れるはずが手違いで私の脳波を入れてしまい、焦った雪男たちは私の脳波を脳のコンピューターの奥底に封印したのです。ところがその後、皆さんもご存じのハンザ・ペーター君の脳波が入り、頭に二つ人格を保存したため共存が出来なくなったのです。その為、今ペーター君が心を引っ込めた途端私が出られるようになったのです。」
皆はぽかんとしてしまった。なにせペーターの人格も良くわからないのにたちどころにこれである。
「あの、わかりにくかったですか?」
マーグは不安そうだったが、ヒューストンは答えた。
「いえ!ただ立て続けにいろいろあって頭の整理を。」
スタインは冷静に状況をとらえ、答えた。
「と言う事は、今まであなたの人格は奥深くに格納されていた、ところが突然出てこれた。それはペーター君と入れ替わったと言う事で、彼が自分から引っ込んだんですか?」
「どうも、その様です。」
ヒューストンは言う。
「あいつあんなに我が強かったのに、自分から引っ込んだのか。」
スタインは推測した。
「もしかすると、我々が今のままでは勝てんと言ったのを知っていて自分から身を隠した?」
「うーん・・」
「私は今初めて外に出る事が出来ました。でも今までのお話は聞いています。私はスノーボルトの体の使い方は全部知っています。私に任せて下さい。モルフェス博士は私が助けます。」
「え、あ、そうですねFBIの人だし、でも本当に1人だけで?」
「外で私の能力をお見せしましょう。」
外に移動した3人はスノーボルトの動きをテストする事になった。マーグが入ったスノーボルトはペーターの頃とは比べものにならない速さと隙のなさでパンチやキックをすばやく繰りだし、更に空中にジャンプして回転して見せた。ヒューストンは驚いた。
「すごい・・」
「では私に任せて下さい。必ずモルフェス博士を助けます。」
ヒューストンは聞いた。
「あの、ハンザ・ペーターの人格はどうなったんですか?なくなったんですか引っ込んだんですか?」
「そうか、私の人格が封じ込められていたのと同じで何かの拍子に入れ替わるのかもしれない。」
「何か不安。」
「しかし私はスノーボルトの身体能力を完全に把握しています。」
「うーん、ペーターの人格の時は動くのもつらそうでした。」
「私は豹の様に早く走る事も出来る。」
そういうと足のクリスタルではない筋肉の部分が収縮を始め、はあっはあっと声を出した。
「いくぞ!」
そう叫び、時速200kmはありそうなスピードでアジトめがけて走り出した。
「こりゃ早すぎるな。車で追おう。」
瞬く間にスノーボルトはアジトのある洞窟前に来た。見張りの兵は双眼鏡を持っていたがスノーボルトは口から吹き矢を発射して気絶させた。そして手の甲から金具のついたロープを射出し岩の上へとまたがった。
「中から兵が出てくるかもしれん、ここは様子を見よう。」




