複雑なロボットの思い 葛藤と苦しみ
黑い戦闘ロボットは中距離からライフルを構えスノーボルトの胴体に向けて乱射した。スノーボルトの装甲は厚く表面的にはノーダメージの様だったが攻撃をくらい体制が崩れ戸惑っていた。暗中模索のように弾を振り払おうとするが動きがおぼつかない。ボルトは言った。
「うーん、ライフルなどの攻撃に対し対処がわからんようだ。出来れば戦闘に長けた人間のプログラムが良かったが。」
「ストップさせた方がいいんじゃないか?」
モルフェスは言った。しかしヒューストンはなぜか熱くなっていた。
「お前は基地で戦った時強かったじゃないか。負けるな!反撃しろ!」
スタインは言う。
「あなたも熱くなる性格ですな。」
スタインに言われヒューストンは気づいたように。
「あっ、多分機械に詳しくないからだと思います。」
その時スノーボルトの何かが変わった。ヒューストンの言葉が届いたようだった。一方的にやられていたのが反撃をしようとする意思が見えた。そしてのけぞっていた態勢を立て直し必死に振り払おうとしている。
「あいつ、必死だ。」
「声が届いたのかもしれんな。」
スタインはヒューストンに言った。
そして遂に右腕で弾をブロックし振り払った。そして目からの光線を放った。そして反撃してくる戦闘ロボットのパンチを受け止めた。相手の右腕に左腕を絡めて柔道技の様に投げた。戦闘ロボットは叩きつけられた。さらにダウンした所を持ち上げ振り回した。ボルトは合図した。
「よしそこまでじゃ。」
「これからどうするんじゃ。」
モルフェスの問いにボルトは答えた。
「儂とスノーボルトの2人で雪男の連中と戦うんだ。儂は罪を償うため生きるんじゃ。」
ヒューストンは聞いた。
「何か寂しくないですか?スノーボルトが戦うだけのロボットになるって。私たちを助けてくれた時は感情があったのですが。」
ボルトは答えた。
「ああ、今感情プログラムチェックをする事だ。」
45歳の政治家のオプティは事務所の自室にいた。そこへ女性が声をかけた。
「あの方が。」
「何?よし通せ。」
それはあの司令官と側近だった。
「これはこれはオプティ様。」
「ライアン君とバス君か。」
「いかにも、実は先日我々の基地におかしなやつらが入り込み、兵器のロボットを奪って逃げました。その為、我々の武力制限撤廃をふもとの町だけでなく隣の町にも広げてほしいのです。」
「わかった警察などにこの件は無視するよう言っておく。」
「ライアン様、腰の低い対応で。」
ライアンはバズにほくそ笑んだ。
「あいつに頭を下げるのも今の内だけだ。いずれ殺されるとも知らず。」
ボルトはコンピューターで基地でインプットしたスノーボルトの人格データを調べ上げた。
「ハンザ・ペーター、22歳、職業は漁師・・真面目な時は真面目で集中力があるが、昔は粗野でその癖が抜け切れておらずわがままと称される事もある・・」
ボルトは会話ボタンを押した。するとペーターの顔がモニターに出た。そして話し始めた。
「俺はこのロボットの体に入って自由を得たんだ。誰の命令も聞きたくない。俺は自分の意思で生きる。」
ペーターの拒絶意思が強くなりスノーボルトのデータにも異変が起き頭がショートしそうになった。ボルトは言った。
「ふむ、戦いに向く向かないは別として問題のありそうな人格じゃな。」
その頃シーラカンス型のロボットが現れ、ふもとの村と隣町の境目地点で襲われ殺された。その様子がニュースで流れた。
「これ、雪男たちのロボットだ・・」
ライアンは基地でにやにやした。
「この事件をニュースで流しボルト達をおびき寄せる。」
ヒューストンはモニターのペーターと話した。ボルトは言った。
「ハンザ・ペーターと言う人がどういう人かしらんが、人に命令されるのが嫌な性格らしい。その為脳波がショート気味だ。ヒューストンは言った。
「今は君はスノーボルトの頭脳なんだ、たのむ力を貸してくれ。」
「嫌だ俺は命令通りに動きたくない。」
「傲慢だな!人間なんてみんな命令で動いているような物なんだぞ!あの時基地で助けてくれたじゃないか。」
ボルトは言った。
「どうも甘やかされた子供の様だ。だが甘やかしてはダメだ。」
ヒューストンはなおも熱く話しかけた。
「ここで君が戦わないと犠牲者が出る!」
「俺の知ったことか。」
ペーターは冷たく返した。さらにヒューストンは続けた。
「人間なんて命令と自分の意思の両方で動いていて完全に自由な人なんていないんだ!さっきだって戦ったじゃないか。」
「あれは破壊されると思ったから自分の為やったんだ。俺の事知らないで偉そうに。」
「俺は君を無理にでも連れて行く!」




