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8話-迷探偵

「ほら、ぼーっとしとらんと行くで〜」

「はっ、はい!」

彼女は私の経営してる探偵事務所で助手をしてくれている、碓氷(うすい) (ここ)()ちゃん。ギフトは獣化。数年前にある人に実験台にされていた所から逃げてきたところを私が保護した。先天性のギフトでは絶対にありえない、獣化。もしこの子の事が俊二くんにバレたら怒られるやろなぁ、と苦笑いしながら私は彼女とともに街に出た。


「今日の依頼は猫探しやで!気合い入れていこ!!」

「もう少しカッコいい依頼ないんですかね…」

「仕方ないやろ、個人営業の探偵やねんから、しっかり頼むで虎々音ちゃん」

「はいはーい」

そういうと彼女は依頼主から依頼書と共に送られてきた猫の愛用していたタオルを自分の鼻に押し当てる。何をしているのかと言うと、タオルに染み付いた"匂い"を確認しているのだ。

「わかりました、意外と近いですね。こっちです」

と、すたすたと路地裏へ入っていく。ゴミだめのようななんとも息苦しい場所だ。普通の嗅覚である私でも息を止めたいくらいなのに何故彼女は平気なのかは全く分からないけれど。

「あっ、いましたいました、あそこで…す………」

先ほどまで元気に話していた彼女の様子がおかしいことに気づき、私も視線の先をみた。

「な……!!」

その先にはあの男の姿があった。


『やぁ』


思考停止状態の彼女を気にする様子もなく、男はゆっくりと近づいてくる。

『どうして僕を避けるの虎々音ちゃん』

不気味な程に笑顔の男からは肌がビリビリするほどの殺気が滲み出ていた。

「…っ……虎々音ちゃん!!行くで!!!」

私は彼女の腕を掴み、走り出した。人混みに紛れてしまえば男も手は出せないだろう。



「はぁ、はぁ……大丈夫?」

「はい…すみません、足が動かなくって…」

大通りに出た私達はひとまず呼吸を整えるためにとある喫茶店に立ち寄った。

「それにしてもあの男、シュミ悪いわ…」

あんな場所で偶然会うはずもない。何より猫探しの依頼は匿名だったのだ。元々猫を探させておびき寄せるつもりだったのだろう。

「この御時世に猫探し…ねぇ」

最近、数年前に起こった猫屋敷(ねこやしき)邸での事件のニュースが()えない中、“猫を探す”という依頼であの状況を作るとは…本当に趣味が悪い。

なにより虎々音ちゃんを実験台にしていたのはアイツなのだ。

「許されへん」

「…まよいさん、怖いです」

彼女は苦笑いしながら私を見ていた。

「あぁ、ごめんごめん」

「私も怯えてばかりじゃダメですよね。この先きっとあの男とまた会うはずなんですから」

そう言う彼女の目は少し怯えながらもその決意がしっかりと見えたのだった。



8話での登場人物


碓氷(ひすい) (ここ)()

性別:女

ギフト:獣化。幼い頃実験により植え付けられたギフト。

血液型:A型

年齢:19歳

備考:嗅覚が鋭い。匂いで色んなものを嗅ぎ分けることが出来る。

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