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四代トラブルメーカー  作者: かいり
#受け入れるということ
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14話―①『転校生』

「今日から二年生だーっ!」



 両手を空高く上げると、蜜柑と睡蓮も一緒に腕を上げた。天気のとても良い今日は、まるであたし達の進級を祝っているかのようだね! 適度な風も吹いて気持ちいー!

 そう。今言ったように、今日は二年生最初の登校日! 今日からあたしは二年生! ピカピカの一年生はもう卒業したよ!



「張り切ってるなー」



 隣で通常テンションなのは、相変わらず癖毛のすごい女の子ハク。傍にいる秋桜も、呆れたようにあたしを見下ろしていた。

 逆になんでそんなにローテンションなのかが知りたいよ! あたしは!



「だって二年生だよ⁉ 後輩が出来るんだよ⁉」

「部活入ってないじゃん」

「まあそうだけど………でもほら! 色々とイベントがあるじゃん!」

「そりゃそうだけど」



 そう! 年度始めといえば! クラス分け! メンツがごっそり入れ替わる一大イベントだよ!



「同じクラスになれるかな~!」

「せめて誰か一人くらい知り合いがいるといいよな」

「ホントそれ! ぼっちはイヤだよ!」

「って言ってるとフラグだからな」

「やめて! 笑えないから!」



 朝っぱらから近所迷惑な程の声量で喋りながら、通学路を歩くあたしとハク。やがて学校に到着すると、ある一ヶ所には人だかりが出来ていた。



「あれだよね!」

「だな」



 風靡学院のクラス分けの貼り紙は、毎年外に張り出している。しかも全学年同じ場所だから、見にくいったらありゃしない。どうにかしてほしいよね。



「あー緊張してきた!」

「運命の瞬間だな」

「蘭李がんばれー!」

「負けるでないぞ!」

「いや、たぶんそういうのじゃないと思うけど……」



 頑張るよー! 先祖達よ! 子孫は頑張るからね!

 幽霊達の応援を背に、いざ尋常に勝負!





「まあ運が悪かったんだよ」

「元気出してよー! 蘭李ー!」

「良いではないか! 一人でも!」



 幽霊達の声が頭上から降ってくる。しかし、机から顔を上げる気力も無い。他のクラスメイト達の声も、そこら中から聞こえてくる。その中に、親しい声は一切無い。

 つまり、あたしはクラス分けで惨敗したというわけだ。

 ハクと雷さんは三組、紫苑と海斗は四組となり、あたしは一組に割り振られたのだ。

 ――――――まあ百歩譲って、ハク達と離されてもしょうがないとしよう。

 でもね、でもね? それ以外の友達とも引き離されるなんてね、思いもしなかったよ? それなりに仲のいい子みんなと離されるなんてね、思いもしなかったよ⁉



「ホントにホントのぼっち………もう生きていけない……」

「蘭李ぃー! 元気出してぇー! 死なないでぇー!」

「何⁉ 死ぬのか⁉ させぬぞ⁉」

「白夜のところに行こっと」



 蜜柑と睡蓮がぎゃんぎゃん騒ぐ後ろで、秋桜の声が消えていく。

 ああ行ったのか。あいつホントにハクにべったりだなぁ。あたしもハク達のところに行きたいなぁ……。



「ホームルーム始めるぞー」



 男の声と、バタバタとせわしない足音が響く。あたしは呆然と顔を上げた。男のくせに髪の長いあの担任はたしか………何て名前だっけ……忘れた。思い出す気力もない……。



「あーとりあえず自己紹介とかそういうのは始業式の後にして、先に転校生を紹介する」

「てっ転校生⁉」



 ざわざわと、教室中がざわめきだした。転校生が来るなんて聞いてなかったからだろう。あたしもビックリしたが、どうでもよかった。

 秋桜は今頃ハクと話してるのかなぁ……いいなぁ……行きたいなぁ……。



「入ってこい」



 ガラリとドアの開く音がした。みんなのひそひそ話が大きくなる。あたしも、力の入らない目で転校生へと視線を向けた。



 ―――――――――硬直した。



 真っ白い髪に、細い体つき。病的なまでに白い肌は風靡の制服に包まれ、白い瞳はクラスメイトを見回した。

 ――――――その一瞬、あたしと目が合う。



「あやつ……!」

「え……うそ……⁉」



 蜜柑と睡蓮も気付いたみたいだった。転校生の男子は、教卓の隣に立つと、ゆっくり口を開いた。



「初めまして。劉木南慎です。よろしくお願いします」



 ――――――劉木南慎。かつて滝川さんの護衛でついていった家の息子であり、「夢」の異形魔法の持ち主。

 そして出来れば、二度と会いたくない人物でもあった。



「肌白いねー!」

「どこから来たの?」

「変わった苗字だなあ!」



 一ヶ所に集まるクラスメイト。その中心では、困ったように笑っている慎がいる。あたしは机に頬杖をつきながら、遠巻きにそれを眺めていた。



「あやつ、何故ここに?」

「おうち遠かったよね?」



 蜜柑と睡蓮が、誰に聞こえるわけでもないのにひそひそと話し込んでいる。

 あたしが訊きたいよ。なんでここにいるのかって。なんで転校してきたんだって。

 わざわざ、あたし達のいるこの学校に……。



「蘭李。白夜が来てるぞ」



 秋桜がすーっと浮遊してきた。教室のドア付近を見ると、ハクと雷が教室の中を窺っていた。即座に席を立ち、駆けていく。



「ハクゥウウーーッ! 雷さーーーんッ!」

「おおー蘭李。生きてるかー?」

「寂しいよぉおーーっ!」

「よしよし」



 雷に抱きつくと、頭を撫でられた。

 雷さん! 珍しく優しくて嬉しいけど怖いよ! 後から何か対価を要求されないことを願うよ!

 と思っていたのに、急に引き剥がされた。



「ね! 転校生ってあの子でしょ⁈」



 雷が面白そうに指差した。その先には、案の定慎がいる。ハクも興味深そうに覗いた。逆にあたしはあえて目を逸らす。



「ああ……うん、そうだよ」

「へぇー! なかなかのイケメンじゃん!」

「そうかな」

「あいつ、全体的に白いな」

「そうだね」

「……なんか冷たいな?」

「そうかな」



 ハクに不審な目で見られる。ハク達に慎のことは話していない。護衛に行ったことは話したけど。

 ――――――あんまり、あの時のことは思い出したくない。



「ねっ! あの子名前何て言うの⁉」

「劉木南慎」

「りゅ……りゅうき?」



 頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ雷とハク。そりゃ初めて聞けばそうなるよね。劉木南なんて苗字、珍しすぎる。

 劉木南―――夢で人を殺す一族。彼らの夢に出てきたら、ほぼ死亡は確実。それほどまでに強力な魔力を、劉木南一族は持っている。

 かつて慎はあたしに、「助けてほしい」と懇願してきた。「正夢にしたくない」と。だからあたしは、慎のおばあさんを助けに行った。

 けど、結局……おばあさんは………―――――。



「蘭李……だよね?」



 唐突にかけられた、聞き慣れない声。おそるおそる振り向いた。教室中のあらゆる視線が、あたしに集中している。

 それもそのはず、あたしのすぐ背後には、慎が立っていたからだ。



「え……? ら、蘭李、知り合いなの……⁉」



 雷が小声で声をかけてくる。咄嗟に答えられず、固まってしまった。

 な………何て言えばいいの? 知り合いじゃないといえば嘘になる。

 けど、出来ればあんまり関わりたくない―――。



「久しぶり」



 ざわっと、辺りが一斉にざわめきだした。もはや言い逃れは出来ない状況にあった。思わずため息がこぼれる。雷が後ろで「どーゆーこと⁈ どーゆーこと⁈」なんて必死に訊いてくるから、仕方なく答えた。



「前に偶然知り合っただけ。全然喋ったりはしたことない」

「へぇー! じゃあ幼馴染みってこと⁉」

「雷、話聞いてた? 知り合ったのはついこの間だしそんなに仲良くないから」

「だからだよ」



 間近で声が聞こえたような気がして、反射的に後ずさった。机に体がぶつかるが、気にしてられない。慎は妖しく笑っていた。



「だから、ここに来たんだ」

「は………?」



 だからここに来た? 何言ってんのこいつは………。



「アンタと、ちゃんと仲良くなりたくてさ」


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