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四代トラブルメーカー  作者: かいり
#殻を破ること
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8話―⑦『決意』

「ありがとう……みんな」



 薄暗い道の中、雷の言葉に、三人と幽霊一人は振り向いた。雷は弱々しい笑みを浮かべている。



「守るって言ったのに……ごめんね」

「ううん。大丈夫だよ」

「なんでお前が言うんだよ」



 べしっと蒼祁が蘭李の頭を叩く。彼女はへらっと笑い、蒼祁は雷に横目を向けた。



「まあ端から期待なんかしてなかったしな」

「蒼祁!」

「いいよ蘭李。その通りだから」



 雷は空を見上げた。橙色の瞳には、輝く満月が映っていた。蘭李は不思議そうに彼女を眺める。先程まで傷だらけだった彼女の体は、蒼祁の魔法によって完治していた。



「うちは弱い。努力も経験も足りてないって実感した。だから、もっと鍛えて強くなるよ」

「雷さん……」

「それでね、家出することにしたんだ」

「ええええっ⁉」



 静かな町中に木霊する叫び声。不審に思った人達が、自宅の窓から外を眺めた。それを見た睡蓮が、人差し指を立て口に近付け、「しーっ!」と注意する。彼女は慌てて口を押さえ、縮こまりながら雷に囁いた。



「なんで……⁉」

「何となく?」

「何となくで家出しちゃうの……⁉」

「でもこうなったら帰りづらいし、健治に頼んでみるよ。いい? メル」

「主が良いなら私は大丈夫ですが……」

「よーし! 早速頼みに行ってくる! じゃあ蘭李! 気を付けてね!」

「えっ? あっうん……」



 雷は手を振りながら駆けていった。メルも急いで彼女についていく。手を振り返して見送る睡蓮の横で、取り残された蘭李はしばらく沈黙し、ゆっくりと蒼祁の方を向いた。



「蒼祁達はどうするの? 今から帰るの?」

「朱兎が駄々こねそうだし、しばらくこっちにいるよ」

「………どこに泊まるの?」

「皇の所だな。お前らあそこに集まるんだろ?」

「そうだけど……そんな何人も泊めてあげるのかなぁ……」

「天神と違って俺には金がある。問題無いだろ」

「ああ、そりゃ安心だね……」



 妙に納得した蘭李。彼女の頭の中では、蒼祁の出した金に食いつく健治の姿が浮かばれた。

 健治、ケチっぽいからなあ……お金さえあれば召し使いにもなりそう―――そんなことを考えていると、突然蒼祁の声が彼女の思考に割り込んできた。



「明日、銃買いに行けよ」

「……うん。分かってるよ」



 蘭李は静かに答えた。彼女は蒼祁から逃げるように、少し斜めに視線を落とす。彼はじっと彼女を見据えた。



「………蒼祁の家でさ、幻術にかけられた時、楽しかったあの頃のことを見せられたんだよね。まだ何も起きなかった頃のことを……」



 蘭李の顔は、髪の毛で隠れて見えない。睡蓮が覗き込もうとしても、顔を逸らされてしまった。



「でも結局同じだった。同じ日々をたどっていって、最後に起こされた時、倒れてる雷と朱兎を見て勘違いしちゃった」



 ――――――みんなが死んでいるって。



「不思議だよね。雷と朱兎だって認識してるのに、みんな(・・・)だと勘違いした。それで殺したのは蒼祁だって聞いて………ものすごく嬉しかった」



 蘭李の頬を一粒の涙が伝った。彼女は自分を抱き、震える腕を押さえつけようとした。



「最低だよね。しかも六支柱の姿を見たとき、まだみんな生きてる(・・・・・・・・・)って勘違いした。それで殺そうとした……」



 未だ震える左手を眺める蘭李。睡蓮は心配そうに彼女を見下ろしている。蒼祁は特に表情を変えていないが、視線は鋭かった。



「どうしよう。ハク達を殺してしまったら。さっきは大丈夫だったけど……みんなあたしを助けてくれるのに、銃で殺してしまったら………」

「だから特訓するんだろ」



 素っ気なく言い放つ蒼祁。蘭李は左手を握り締め、小さく頷いた。



「コノハだけじゃダメだって分かった。いや、ホントはもっと前から分かってた。コノハが使えない時は、銃を使うしかないって。コノハで敵わない時は、銃を使えばいいって……」

「慣れりゃお前はまたすぐ使えるようになるだろ。銃の才能だけはあるんだからな」



 蘭李は顔を上げた。黄色い瞳は、真っ直ぐに蒼祁を見つめる。



「あたし、銃でみんなを助けたい。でも出来ることなら、あんまり殺さないで助けたい。だから教えてよ。蒼祁」



 ――――――銃で、相手を殺さずに戦う方法を。


 沈黙が流れる。蒼祁と蘭李は視線を絡ませたまま静止している。その傍で、睡蓮も静かに見守っていた。

 やがて、蒼祁がフッと笑った。



「………考えは生温いが、まあ教えてやるよ。殺さずに戦う方法をな」



 そう言い残して、蒼祁は去っていった。彼が見えなくなったのを見計らって、蘭李は別の道を歩いていく。睡蓮は安堵したように胸を撫で下ろし、彼女についていった。



「蘭李! がんばって! 蘭李ならできるよ!」

「……うん。ありがとう。睡蓮」



 蘭李の顔が綻びた。それを見て、睡蓮も嬉しそうに笑う。そうして談笑しながら、二人は帰路についた。


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