2:実らない
桐谷 真琴:きりや まこと
高等部1-3 10番
長身で吊り目のどう見ても男子にしか見えない女子。真の主人公…かもしれない。
ルックスがコンプレックスかというと全くそんな事は無い、ありのまま受け入れて自覚してるが故の悪ノリもするタイプ。素の一人称は「俺」
男女両方から告白されるが、本人は至ってノーマルかつ一途である。
入学式から一週間。クラス内にぼんやり仲良しグループなんかが出来る頃、忘れかけていた最後の一人がやって来た。
「転校って訳でもないんだが、出遅れたから改めて自己紹介な」
担任に促されて入って来たのはスラリと背の高い、女子の制服を適度に着こなした……こいつ本当に女か? って聞きたくなるような奴だった。悔しいけど分かりやすく言うなら「涼しげなイケメン」って感じの。
そいつは悪ノリした担任に言われ、転入生でもないのに黒板に自分の名前を書いてからこっちに向き直った。
「桐谷真琴、家庭の事情で一週間遅れになりました。容姿は自覚してるから突っ込まないでほしい、以上」
「中身も男っぽいだろ。んじゃ桐谷の席はあそこな」
そいつ……桐谷は担任に示された席へ向かおうとして、すぐ近くにいた俺を見た途端に動きを止めた。無駄にデカくて無駄にイケメン(いや女子だけど)の眼力に怯みながら、どうにかヘラッと笑ってみる。
担任も周りも俺らを見守る中、桐谷はぽつりと呟いた。
「りゅうへい……?」
…………。あれ、今何かすっげぇ嫌な、それでいて信憑性ありそうな予想が浮かんだ。心の中で『外れろ外れろ外れろ』と祈りながら、それでもどうにか震えを抑えた声で聞き返す。
「○○公園で遊んだ……よな」
その瞬間、満面の笑みを浮かべた桐谷は記憶の中の「まこと」にそっくりで。……認めますよ、認めざるを得ませんよ。つーかイケメンはどんな顔してもイケメンって本当だったんだな。
こいつ女のはずなんだけど。
「何だ、知り合いか?」
「小さい頃に少し」
「良かったなー同じクラスに知り合いいて。木之下もいつまで呆けてるんだ」
「だ……誰が予想できるかー!!」
「何がだよ?」
「お前だよ! ちっさい頃のあの美少女っぷりはどこ行った!?」
「思い出フィルターだろそんなん」
「見た目も中身も男らし過ぎだろ! お母さん泣くぞ!?」
「めっちゃイイ笑顔で送り出してくれたんだが」
「マジで!?」
「ねえねえ、もしかして……隆平君の初恋相手だったり?」
「ばっ、ちが、んなっ」
「……悪かったな」
「笑い堪えながら謝んなよバカァ!」
俺のこっそり継続中だった初恋相手は、誰がどこからどう見てもイケメンになって帰って来ました。――誰が予想できるんだこんな事!!
隆平の波乱万丈生活スタート…なるか。
ちなみに「初恋相手か」と聞いたのは近くにいた女子。