プロローグ
俺の持つ力、知識、魂。俺が自分の力で掴み取ったものはどれ一つない。例えば、今俺が持っている力は…
俺はその時燃え盛る炎の中で戦っていた。
俺の目前では双子の兄が俺の…で貫かれていた。
当然俺は急いでソレを抜き、自分なりに応急処置だけでもしようとした。だが、俺がどのような処置をしたところで今の兄には意味をなさないであろう。 そう言い切れるほど、兄は衰弱していた。
「にいちゃん!待っていて‼︎今助けるからね‼︎」
幼い俺でもこれではおそらく助からないと理解はしていた。だが俺は家族を、兄を失いたくなかった。例えこんなことをやったところで無意味だと、こんなことをするより一思いに楽にしてあげた方が良いと、そう分かっていても俺は、兄を助けるための行動をしないというわけにはいかなかった。
すると突然兄はこう言い始めた。
「はるま、いいか?これはお前に取っての力だ。こうなってしまったことは気にするな、これは初めから決まっていた『運命』だったんだよ。俺たちはそれを成し遂げたんだけなんだから。いいかはるま、君はこの後、僕の記憶と、この出来事を忘れる。だけど、僕は君の中で生き続け、そして見守る。だから泣くな。いいか…は…る…まぁ…」
俺は、その時にはその言葉の意味を理解はできなかった。それ以上に悲しかったからであろう。しかし、これによって俺はもう一人の双子の兄とこの出来事の記憶を無くした。
そして次に知識。
また俺の目の前には、血だらけになっているもう一人の兄、赤九人斎斗。そして彼の近くにいる女の人。黄麻野実里を守る為に体を張った。そして、死に掛けていた…
「死なないでよ…。斎斗、お願い…。」
「泣くなよ、実里。」
兄は人一倍、不器用だったけど優しい人であったからそう言う事しか出来なかったのであろう。
「春間、これを受け取れ。」
と、だけ言い兄貴は俺の手を掴んだ。すると一気に情報や知識が俺の中に流れ込んできた。そのことを分かっている様に兄貴は、こんな事を言った。
「いいか。これはお前に渡したい知識だ。お前に取って大切な事だ。はあ…はあ…だからお前に全てをやる。『運命』に立ち向かうための統べを。頼んだ…ぞ…」
そう言って、俺の為にある知識を残して死んだ。
これらはすべて偶然で無かった。この全ての物語の始まりであるこの世界での修正力によって、決められた、たった一つ分岐点しかない物語の出来事である。
そして今、魂の出来事に遭遇していた。
それは、俺と彼女との死闘である。
「お願い、私は貴方を殺したくないの…。お願い…」
まるで天使のような羽を付けた彼女は言った。しかし、俺はそれでも下がらなかった。下がる訳にはいかなかった。
「ヒナ。俺はお前に約束した、幸せになろうと。俺は約束を守る為に君を守る為、後ろは振り向かない。」
もしも、この世界には滅びが纏おうと俺は君を愛し、幸せにさせてみせる。
それが、俺と世界のたった一つの『願いというなの運命』なのだから。
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