誘拐
あぶねー刑事シリーズの3作目です。
某大学付属小学校。
下校風景。
学校の前には高級車が立ち並び、親が子供たちの帰りを待っている。
「かずまくん、また明日ね~」
「じゃ~ね~」
「またな~」
一馬は門を出て、自分を待っている車を探す。
黒いリムジンを見つけて歩いて行くと、黒いスーツの男が降りて来て、後ろのドアを開ける。
「お帰りなさい。一馬ぼっちゃん」
「あれ?初めての人?」
「はい、よろしくお願いします」
「ふ~ん」
一馬が後部座席に座ると、車は音も無く走り出した。
しばらく走って行くと、
「あれ?いつもと道が違うんじゃない?」
「工事やってるんで、迂回してます」
車は、段々街から離れて行く。
人通りの無い道で、車は止まる。
「どしたの?」
すると、ガスマスクをつけた運転手が振り向いて、ガスを一馬に噴射した。
一馬は意識を失った‥
川口警察署捜査1課
あの爆弾魔が逮捕されてから半年が過ぎ、ホヘト刑事が現場復帰する日が来た。
「ただいま~」
「あ-!ホヘト先輩だ!もう大丈夫なんスか?」
「ユオ、久しぶり。なんとかな」
「ホヘトさん、お帰りなさ~い。寂しかったッスよ~」
「モリモリも久しぶり」
「な~んだ、来ちゃったの?せっかく若い奴入れようと思ったのに~」
「ラッキーデカ長、ご迷惑おかけしました。そんな寂しい事言わないで下さいよ~」
「あれ?どちらさんでしたっけ?交通課の人?」
「相変わらず厳しいな、ボッサンは。病み上がりなんだから、お手柔らかにお願いしますよ」
ラッキーデカ長はみんなを見渡して言った。
「冗談はさておき、やっと全員そろったわけだ。これでどんな難事件が来ても大丈夫だな」
「大丈夫かな~?」
不安の拭えないホヘトであった。
同日16:00
川口市内において、内閣総理大臣、星 飛雄徹首相の御子息の、星 一馬(12才)が下校途中で行方不明になった。
迎えのリムジンに乗り込む姿は目撃されているが、帰宅時間になっても帰宅せず、リムジンごと行方不明になったと警察に連絡が入った。
同日17:30
川口市郊外の空き地でリムジンを発見。トランクから縛られた運転手が救出された。
御子息の星 一馬は未だに見つかっていない。
翌日10:00
川口警察署捜査1課
ラッキーデカ長が足早に部屋に入ってきて、真剣な表情で言った。
「たった今首相官邸に、犯人から連絡が入った。内閣総理大臣、星首相の御子息の一馬くんが誘拐された。身代金は2億円。
24時間後の明日の朝10時までに支払わないと、子供の命はないと言ってる。金の受け渡しは、追って連絡するという事だ」
ボッサンは腕組みをして眉間にしわを寄せて言った。
「人質を取るという卑劣な行為は絶対許せん!」
ユオは想像しながら言った。
「2億円か~。一生掛かっても拝めないな~」
ホヘトはモリモリに聞いた。
「2億円あったら何する?」
モリモリは言った。
「取りあえず警察辞めるッスね」
ここ川口警察署に『内閣総理大臣御子息身代金誘拐事件』の捜査本部が置かれた。
そして、本庁が川口署に代わって陣頭指揮を取る事になった。
ボッサンはプリプリしながら言った。
「なんだよ!手柄を横取りかよ!」
ラッキーデカ長は落ち着いて言った。
「こうなる事は予想してたよ」
ホヘトが喫煙室でタバコを吸っていると、本庁から来た和塀刑事が入って来た。
「ホヘト、久しぶりだな」
「1年ぶりか?」
カズヘーとホヘト、本庁に同期で入ったライバル同士なのである。
「怪我は大丈夫なのか?」
「なんとかな」
「今回の誘拐事件、俺が陣頭指揮を取る事になった」
「お前も出世したな」
「ところで、あの件はどうした?」
「あ~、まだ何とも言えない」
ホヘトの父親も刑事だったが、1年前に何者かに刺されて死んだ。
そして、遺品の中から1枚のディスクが見つかった。
中身は、警察の地下組織『愛國者』の登録名簿。ホヘトも噂では聞いていた。
この『愛國者』は、暴力団と癒着してワイロを貰ったり、表には出ないブラックマネーを操作したりして、莫大な利益を得ているという“噂”である。
『愛國者』の真相に迫った父は、闇に葬られたと思われる。
その『愛國者』の登録名簿の中に、ここ川口警察署のラッキーデカ長の名前があったのである。
本庁ではガードが厚く捜査出来なかったので、川口警察署に転任届を出して調査しようと考えたのである。
父の無念を晴らす為に‥
しかし今は、誘拐事件に専念しよう。
16:00
川口警察署第1会議室
犯人からの連絡が川口警察署に入った!
ラッキーデカ長が指示を出した。
「よし!スピーカーで流してくれ!」
緊張が走る!
犯人の声がスピーカーから流れた!
『さて。金の工面は出来たかな?』
陣頭指揮を取るカズへーがマイクの前で答えた。
「もうすこし待ってくれ」
横で聞いていたボッサンが、スタンドマイクを引ったくって怒鳴った!
「テメ~卑怯なマネしてんじゃね~ぞ!ボケが!」
『ん?誰かな、今のは?そんな事言っていいのかな?』
カズヘーがマイクを手で押さえて、
「所轄は引っ込んでてくれ!これは本庁のヤマだ!」
カズヘーがマイクを取り返して、
「すまなかった。金は明日の10時までにはなんとかする」
『たのんだよ。6時間後にまた連絡する』
犯人からの電話は切れた。
「気にいらねえな!本庁のヤマだっつ~んなら、うちらはカンケーねーな。あと6時間か。よっしゃ、飲み行くか」
ボッサンは部屋から出ていった。
オカマバー
マリリンの部屋♪
ボッサンは、ホヘトとユオを連れてほんとに飲みに来た。
マリリンが出迎えた。
「ホヘトさん、いらっしゃい♪」
「今日はまだ勤務中だから、アルコールはいいや」
おっぱいが辺りを見渡して言った。
「あら?今日は、バズーカもりもりちゃんはおらんの?」
ボッサンが答えた。
「なんだか気が乗らないからって家に戻ったよ」
ユオが心配そうに言った。
「なんか今日のもりもりさん変だった」
「あら~、ユオがおるやんけ♪おっぱいでグリグリしたるよ~♪」
「わー、こっちくんな!」
ボッサンは、モリモリの事を気にしながらビールを一気にカラにした‥