私は女優、と己に言い聞かせる。

『さあ、幕は開いた』

　私は女優、と己に言い聞かせる。

　不穏な会話をする者の後ろでパチリと扇子を鳴らすだけ。

　ピタリと会話が止む。

　首が落ちる椿を戴く私の扇子に、首に刃を当てられた様に感じるのもおかしくない。

　いつしか、私が近付くだけで場は静まる様になった。

　人は私を狼の威を借る雌狐と呼ぶ。

　ええ、所詮狼の威を借りてるだけ。

「エリザ、此処に居たの？」

「……オルゲン様」

　中身は小動物なの……肉食獣こあい！　誰か助けて！