小話 我慢
小話02
冬も深まる12月下旬。
最近はめっきり日が落ちるのが早くなって、ひいては×××××君と一緒にいられる時間も短くなって、身も心も肌寒くなってきました。
「×××××くーん」
「はいはい、ってうわっ!」
目の前に現れた×××××君に思い切り飛びついて抱きつく。肩口に顔を埋めて強く抱きしめる。
「はぁ……×××××君……」
「こう言うのもなんだけど、×××××ちゃんデレ過ぎじゃないかな」
「だってぇ……」
ぽんぽんと×××××君は私のことを撫でてくれる。男の子だけあって、私より大きな手は安心感がある。
「逢えないのは僕も寂しいんだよ?」
「うん……」
何より、休日に逢えないと言うのが痛い。防犯のためだとかで、休日の教室への立ち入りは許可と鍵が必要なのだ。
正直なところ、鍵は×××××君が内側から開けてしまえばいいんだけど、見つかったときに面倒になってしまう。
「×××××君私に取り憑けたりしない?」
「無理だね、僕は教室に取り憑いてるから」
×××××君は本当に一歩たりとも教室から出られない。前に出ようと試してみたら、変なバリアみたいなのに遮られてしまった。
「ルール変更できないのかなぁ……」
「放課後の教室っていう僕が存在できる条件を変えようとしたら、もしかしたら僕消えるかも」
「んなこと絶対させないから」
「頼もしい限りだね」
そんなことを話している間にも、日はどんどん沈んでいく。あぁ、三日後の月曜まで逢えないのかぁ……。
×××××君は悩ましそうにしてから、「あー」っと小さく声を上げた。
「どうしたの?」
「えっと……一つだけ、寂しくならないような方法が……」
「どんな?」
「…………」
×××××君は、黙って目を逸らして、俯いて、言いよどんだ。心なしか顔も赤い気がする。
「どんな策なのさー」
「……大分、気障ったらしいけど……いい?」
「気障ったらしい?」
×××××君は私の方に顔を向ける。久々にみる×××××君の真っ赤な照れた顔だ。
「何でそんなに恥ずかしがって――んっ!?」
話している途中で唇がふさがれた。
キスされた。
「…………」
「――っ! ――っ!?」
顎に手を当て上を向かされ、腕を背中に回され引き寄せるように抱かれる。
頭が真っ白に塗りつぶされて、訳が分からなくなる。力が抜ける。
ただただ柔らかい唇が押し当てられる感覚だけがはっきりと伝わってくる。
「……っ」
「…………」
長い長い口づけが終わり、ゆっくりと×××××君が離れてしまう。
「ぁ……」
「これで月曜日まで、我慢できる?」
「……んっ」
「我慢できなかったら、もっといっぱいしてあげるからね」
×××××君は甘い声でささやくと、凄い勢いで背を向ける。
「あーあー、マジ恥ずかしい、演技やめやめっ! ×××××ちゃん僕になんてことやらせるのさ、あー顔あっちぃっ! 僕のキャラじゃないよ、まったくっ!」
頭を抱えてじたばたと恥ずかしそうに悶える×××××君。
さっきまでのとてつもないイケメンオーラはどこへやら、見ていて微笑ましくなるほどの可愛らしさだ。
少しからかいたくなってくる。
「あー、我慢できないかもなぁ……」
「っ!?」
リンゴのように染めた顔で私を凝視して、ぷるぷると震える×××××君。
凄い精神力でゆるゆる私の方に手が伸びてくる。
が。
「む、無理無理無理無理っ! ごめんやっぱ駄目っ!」
「えー、こう言うのは年上がリードするものでしょ?」
「た、確かに僕は生前死後足せば23歳だけど! だからってそれは酷いよ!」
「……だめ?」
「っ……う、上目遣いしても駄目っ! いや、ごめんなさい許してください!」
泣きそうな顔になって懇願する×××××君。
まぁ、からかうのもこの辺にしておこうかな。
「じゃあ、また今度……してね?」
「うぐ……わ、分かったよ」
心なしか少しやつれた気がする×××××君に近づいて、私から軽く軽く口付ける。
「んへへ、×××××君に頑張ったごほーび」
口をぱくぱくとさせながら、既に赤い顔をさらに染める。
「ほらもう時間だし! ぼ、僕もう消えるから!」
「あ、ちょっ」
「ばいばいっ」
逃げるように消え失せた×××××君。
まったく、私にもさよならは言わせて欲しい。
「ばいばい×××××君」
感覚の残っている唇を軽く撫でてから、私も教室を後にした。




