七話
「ジャン! なぜ情報をよこさねえ! ……入るぞ!」
乱暴にドアを開け、男が中に入ってくる。
「たくよ! せめて無線機でも誰か開発しろってんだ……よ……」
まずそいつの目に飛び込んできたのは、赤く染まったテーブルだったはずだ。
「こりゃ一体……?」
それから、部屋の奥のジャンに気づいたようだ。両手両足を縛り、床に転がしてある。そいつは少しだけ脚を引き摺りながら近づいていき、手を触れようとする。
背後から肩を叩くと、驚いて振り向く。襟首を掴んで引き寄せ、頭突き。
「ぐあぁ!」
腹に一発。身体が折れたところに、木の棍棒を振り下ろすと、あっけなく気を失った。
手足を縛ったそいつに頭からたっぷり水をかけてやると、目を覚ました。目と目が合う。
「! てめぇ……なんのつもりだ!!」
俺はそいつが忍ばせていたナイフを見せる。
「くそ! 返しやがれ!」
「そう言われて従うやつがいると思うか?」
「ネイティブが……転生者を舐めるなよ!」
男は火炎魔法でロープを焼き切ろうとしたに違いない。だが、湯気が立つだけだ。そのことで、ようやく自分の状況に気づいたようだった。
「なんだ……こりゃ」
水をたっぷり吸わせた毛布で、ぐるぐる巻きにしてある。さらに水をかけてやる。まだまだたっぷり用意してあった。
「くそ! これしきの水…….!」
さらに湯気が立ち昇る。
「ぐあ!! あ、あちちち!」
炎使いだからといって、特段そいつ自身が熱に強い、というわけでもないらしい。火こそつきはしないが、毛布の水分は熱せられ、熱湯を全身に浴びているのと同じ状態だ。また水をかけてやる。
「はー……はー……」
「話してもらおうか。俺の母と妹をどうした?」
「へ……知らねえな」
棍棒で顔面を殴りつける。テーブルだけでなく、床も赤に染まりはじめる。
「へ……へへ、ば、馬鹿が。転生者を敵に回すとどうなるか、わからねぇのか?」
「俺が生まれたときから、お前らは敵だ」
もう一発。壁にも血が飛び散る。男の目に、すでに反抗の色はなかった。毛布の上から、俺が砕いた膝をもう一度元通りにしてやる。
「ぎゃあああッ!!」
「その声でご近所さんが集まってきたとして、それはあんたの敵か味方か、どっちかな」
そいつが息を整えるのを待つ。
「……い、市場だ。俺たちはネイティブマーケットのオーナーに雇われてんだよ」
「それはどこにある?」
「け、検問所を出て、通りを真っ直ぐ行ったところだ。でかくて白いテントだ。直ぐにわかると思う……。……お前の家族は上玉だから、競りにかけられると見て間違いない……」
「競りはいつだ。会場の警備人数は?」
「明日の晩だ。オーナーが話しているのを聞いた……。数人警備はいるが、特別厳重じゃない……。な、もういいだろ? これを解いてくれよ」
「他には?」
念のため、もう一度水をかけながら言う。
「ぷはっ……はぁ、はぁ……。下っぱの俺にゃ、それ以上のことはわからない」
「もう一本の脚も行っておくか。このままだとバランスが悪いだろう」
「本当だよ! もう、やめてくれ……。俺は本当にただの下っぱだ。せっかく転生できたのに、少し炎が出せるだけの……」
びしょ濡れでわからないが、涙を流しているのかもしれない。
俺は棍棒を頭に振りおろした。男は動かなくなり、血溜まりができる。念のためもう一発。
ジャンを側に引きずっていく。もう息はなかった。二人の毛布や縄を解き、床に転がす。ジャンに棍棒を握らせ、男のナイフは、一度ジャンの腹に突き立てたあと、持ち主にお返しした。
適当に部屋の中を荒らす。揉みあった末の相打ち。違和感だらけだが、この世界に警察はいない。




