十二話
母さんが俺を目覚めさせてくれたらしい。少し意識がぼーっとしているが……。
「とにかく死にな!」
風が吹く。俺の胸が切り裂かれた。鋭い痛みが走るが、身体はつながっている。
「がっ……!」「リュウ!」「お兄ちゃん!」
「ち……腐っても転生者の子か。最低限の魔法耐性は備えているっつーわけだ」
嬉しい誤算。痛みで意識がはっきりした。
両手で拳銃を構える。
「……は? ピ、ピストル? 嘘だろ?」
撃鉄を起こし、引き金を引く。銃声と反動。司会者が膝をついた。どこかには当たったらしい。
「痛ってぇ!!」
後ろでキャロルが男の手を噛んでいた。男は思わず手を離し、キャロルがこちらに逃げてくる。
もう一発撃つ。反動。胸の切り傷が痛む。男はその場に倒れた。
三十八口径。どちらも死んではいないかもしれない。バリアの使い手でなくて幸運だった。
司会者を飛び越え、街路を走る。背中に痛み。その場に倒れた。司会者が能力を使ったようだった。 キャロルが俺の手から警棒を奪い取り、司会者の頭に振り下ろした。
「はぁ……はぁ……」
「リュウ、どうしてあなたが拳銃なんか……!? い、いえ、それよりも出血がひどいわ……。これ以上はもう……」
「お兄ちゃん……死なないよね?」
「……当たり前だろ。行こう」
特に無防備な状態で喰らってしまった背中から流れた血が、ズボンまで染め始めているのを感じる。
二人が俺の身体を支えようとするが、自分の足で歩く。検問所はもうすぐだ。
検問所……俺たちのことはすでに伝わっているらしく、警備が厳重だ。銃弾は残り三発。ここまでか……。
「母さん、キャロル……。なんとかあいつらの気を引くから、その間に検問所を抜けてくれ」
「嫌だ! お兄ちゃんも一緒じゃなきゃ嫌だよ!」
二人とも目に涙を浮かべている。自分では見れないが、背中の傷は相当深いのだろう。油断していると意識が遠のく。眠ったら終わりだった。
「キャロル……これをやるよ。父さんからもらった腕時計。……夢の世界に連れていってくれるかもしれない道具だ。いいか? もし夢の世界に行けたら、これはすぐに壊すんだぞ」
「そんなのいらない! なんで今渡すの!?」
「母さん、これ、拳銃……。あっちの世界から持ってきた。使い方はわかるよね……?」
「リュウ……あなた……!」
キャロルの頭を撫でる。奏衣……ごめんな。
俺は立ち上がり、大通りに出た。
「あ、あいつだ! いたぞ!」
「気をつけろ! やつはおかしな道具を使うと言う話だ!」
「お兄ちゃん!」「キャロルだめ!」
できるだけ時間と距離を稼ぐ。二人とも、その隙にうまく逃げ延びてくれ。




