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戦常論  作者: 故に我等人間もどきであり。
ありふれている異世界について
8/8

苦渋と辛酸

遅れました。

テストが終了し、俺のクラスの人間は3人だけになってしまった。

あれだけ騒がしかった生活音がピタッと止まってしまったからなのか、体にほんのりとした違和感が残った。

他のクラスの人間もこんなに減らされたのだろうか。少し気になるところだったので席を立ったが、直後に授業開始のチャイムが鳴る。

間が悪い。そう言わざるを得ない。


「じぃ~っ……」

「……」


「……なんだお前ら。言いたい事があるならサッサと言え。」


そんな不幸に見舞われた俺を見るのは紅芽ガチファンと瑠姫(恐らく本人)だけだ。


「いや別に?貴方が勝ち残ったという事実に驚いているだけですが?」

「微塵も思ってない癖によく言うよ。それを言うなら俺だって驚いているさ。あんなにボコボコに負けた後だというのにな。」

「フン!言葉をそっくりそのまま返すわ!これっぽっちも驚いてない癖に!」


……確かに、紅芽ガチファンはなんだかんだ言って実力があることは知っていた。

と言っても俺やその他この学園の実力者達、ましてや(今明らかに俺を凝視している)瑠姫には足元にすら及ばないだろう。

だからこそ、この試験では落ちるとばかり思っていたのだが。


「……悪かった。」

「……へ?」

「アンタへの評価を幾分か変更するよ。意外と強かったんだな、アンタ。」


「うぅ~……なんか馬鹿にされてるようで悔しい!なんでそんなに上から目線なのさ!!」

「ははは」

「一ミリも笑ってないじゃん!」


初対面が地獄だったせいでわからなかったが、案外、この紅芽ガチファンは面白いやつなのかもしれないな。

今はただ騒がしいだけなのだが。

あと瑠姫、お前は静かすぎ且つじっと見過ぎだ。いつか穴明くぞ。



少し時間が経ち、教師が教室へ入ってくる。

別に特段アレコレあるわけでもなく、数時間が過ぎ教師が退出する。


「……暇だな。」

「そうですね……この後もう一回本当の入学式があるみたいだからそれまで待機なんでしょう?」

「そうだな。……どうする?軽く自己紹介でもするか?」


そこにいる全員が頷く。3人しかいないがな!

紅芽ガチファン曰く、じゃんけん?という決め方があるらしくそれに則り順番を決めていく。

そして。


「……俺が最初かよ……」

「言い出しっぺの法則、ね。ザマァ見なさい。」

「……いいだしっぺ?」

「ああもうなんで貴方達こういうのを知らないのよ!ウガー!なんかムカムカするー!」


仕方無いだろ、と心の中で反論をする。

|紫遠《元々この世界に居なかった人間》と|瑠姫《「あ、コイツ絶対知らねぇな」って感じの奴》だぞ?


「……紫遠だ。呪影(ロア)って言った方が伝わるかもしれねぇな。これからよろしく。」


うん、当たり障りのない挨拶だなコノヤロー。

だがこれで良いのだ。あんまり目立ちたくはないしな。


「じゃあ次は私ね。私は有空(りあ)。これと言った二つ名は無いからリアでも何でも言って頂戴。……因みに紅芽様に助けられて以来、紅芽様が大好きです♡……目の前のこの紅芽様の兄を名乗る不届き者は大嫌いです。」


しっかりとした血縁なんだがな……

そして、そのまま目線は必然的に一人に集中する。


「……zzz」


さっきまであんなに興味津々だったくせして爆睡してんじゃねーか。

……デコピンでもしたろ。


「えい」

「ふぎゃっ」


猫か。


「……何?せっかく人が気持ちよく寝てたのに……」

「じゃあサッサと自己紹介しろ。」


渋々、といった様子が見て取れるぐらいにはぐだぐだしながら俺らに向き直る。


「『断罪者(ジャッジメント)』……七伝論の瑠姫。これでも有名……だから気を付けて?私に何かしたら問答無用で殺すから……ね?」


ゆったりとした口調からは考えられない程物騒な物言いで瑠姫は告げる。有空も俺もそんなに驚かなかった。

それが案外瑠姫は驚いたようで(全く動いてはいないが)目を見開く。


「……少しは、怖気づくと思ったのに、意外。」


そりゃ知ってるからな。そもそもそんな性格じゃなかったら『断罪者』だなんて二つ名が付くわけねーだろうが。

さ、自己紹介は終わった。


「……結局暇になるんじゃないの~!!」


仕方無いだろ。3人でする自己紹介なんてそんなもんだろ。

いや寧ろもった方だろ。時間を確認すると、10分も経っている。


「ってもなぁ……これ以外にすることったらアレしか無い訳だが。」

「……あぁ、もしかして、アレの事?」

「あ、あれって何です?……そして何で二人とも私の肩を掴むんですか!?」

「「……」」


そりゃ決まってる。


「もちろん、戦闘訓練(おあそび)。」

「だから、体育館とその戦闘申請書取ってきてくんね?」


「嫌ですよ!?なんで貴方や七伝論の人と戦わなきゃいけないのよ!?入学した時の戦闘で私の実力は知っているでしょう!?」


その言葉を聞いて、俺はにやりと口角を上げる。


「なら余計に強くなんなきゃだなぁ?」

「……ほら、やろう?」


「ぎぃやぁぁぁ!いやだぁぁぁぁぁ!」


そのまま駄々を捏ね続けた有空を言葉通り引き摺り、体育館へと移動する。

過半数の生徒が退場したからか体育館の中も、体育館へ行くまでの道でさえも人影すら無かった。

もし此処まで学園長が想定していたのだとしたら、かなり性格が悪い。


「んじゃやるか。瑠姫、ルールとかあるか?」

「……死ななければ……なんでもいいん、じゃない?」

「んなぁ!?私が可哀相だと思わないの!?」


しょうがねぇな……、って言うか。


「……なぁ有空、お前ってそんなキャラだっけ?」

「知らないわよ!!こんな状況で自分の振る舞いなんて気にしてられないわよ!!」


なんかこう、どっちかと言われたら間違いなく静かなタイプだと思っていたんだがな……

初対面(あの時)は緊張でもしていたということなのか?


「……なら、私たちは有空を倒すのは、禁止にするとか……?」

「それはそれで贔屓されてるようだから嫌!貴方達、異能のフル活用禁止!これでどうです?私の得意の接近戦にさえ持ち込めれば勝てる……かもしれないんだから!」


せめて言い切って欲しかったかな。

しかし成程、いい塩梅だ。

(というかクロ)の異能は汎用性が高いことが強みだ。そして瑠姫も『断罪』の異能さえ封じれば斧を使って接近戦をするしか方法が無いだろう。それを封じればあの有空でも勝算が生まれることだろう。


――だが忘れていないだろうか。

俺がこいつをボコボコにしたのは、接近戦だということを。

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