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戦常論  作者: 故に我等人間もどきであり。
ありふれている異世界について
7/8

差異無し

俺は覚えている。入学早々に俺に関わってきたのはあの紅芽ガチファン以外にももう一人いた。

いや、声をかけてきたわけじゃない。紅芽ガチファンとの戦闘が終わった直後、俺の目の前まで来てガン見してきた瑠姫の姿を、俺は覚えている。

あの時、少なくとも俺に興味を示していたはずだ。興味無くとも、記憶には残っていたはずだ。

なのに、目の前の女は「知らない」、「覚えていない」と言っていた。

これが、違和感の正体だ。


「……そんなわけがないでしょう?私は断罪者(ジャッジメント)の……」

「ああ、お前は瑠姫だろうよ。だが()()()()()。攻撃が単調。異能の無駄遣いだ。言ってしまえば超質素(スーパーチープ)。」

「おかしいと思ったんだ……噂通りの瑠姫なら今の俺には圧勝していたはずだ。」


「……ッチ。」


舌打ちされた。少し悲しいや。

が、これで完全に偽物だってわかったな。

すると、目の前の瑠姫もどきは憤慨して俺を罵り始めた。


「……なんで。なんでなんでなんでなんで!この異能さえあれば!名声も私のものになる筈だったのに!」

「……その肉体で行動を起こしても、お前のことになるわけないだろ。」

「何にもわかっちゃない!どうして……こうなるの?……確かに私は瑠姫じゃないわよ。『交魂歌(トレース)』で肉体を交換しただけ。本物はこの身体の中で眠っている。」


いや知らんがな。取り乱したり異能を開示したり忙しいやつだな。

……なるほど、こうして休憩する暇を作るのと同時に同情を誘っているのか……

だが残念。俺の心は簡単に動かないぞ?


「だからなんだ?同情でも誘ってるのか?」

「……さあね!!」


瑠姫もどきは瑠姫の異能を使って、俺を囲んでいた剣を射出する。

だがやっぱり軽い。

じゃあそろそろ――


「遊びは終わりだ。」

「ッ⁉」


そうして俺は拳を強く握り、光を纏わせる。そして、そのまま瑠姫へと駆け出す。

当然瑠姫もどきは焦って剣を取り出し、俺を斬り付ける。

しかし焦りからか動きは単調であり、簡単に避けられた。


そうして、俺は握った拳を開いて()()で瑠姫の腹を叩いた。


「がっ……!?」


そのまま瑠姫もどきは苦痛の顔を浮かべ倒れる。

瞬間、瑠姫の顔から憑き物が落ちたような感覚がする。

うん、ただの感覚だが恐らく今のこいつは瑠姫本人なのだろう。

全くなんで瑠姫程の実力者があんな雑魚に良いように扱われていたのだろうか。

まぁそんなことは置いといて……っと。


「コイツからバッチを奪って……200ポイント達成!」


ゲームであれば『イェーイ!』という効果音が鳴ってる筈。

問題の異能力者はもう俺に関わってくる事はないだろう……なにせ、あそこまでボコボコにしたからな。

……俺はそこで思い出す。瞬間、冷や汗が止まらなくなる。

何故なら、今隣で伸びている瑠姫は本人な訳だ。

つまりだ。

例え精神が別の奴だったとしても表面上は瑠姫をボコボコにしてしまった。


これ……ひょっとして不味い状態か?


もし仮にこの瑠姫が他の人に見られたとしよう。

その人が現場検証を行う筈。その時にあの能力者が何か言ってしまえば一瞬で俺だとバレる。

うん。不味い。

急いで瑠姫をそこらの木に腰掛けさせ、急いで立ち去る。

まだ、間に合う筈。

瑠姫自身がここの人間をボコして疲れて寝たとかそういうことにすればまだ――!

――そう、考えてた頃が俺にはありました。


「……んぁ……」

「!?」


瑠姫が目覚ましそうだと!?

不味い……不味い不味い不味い!


〔……私が何とか逃がそうか?〕


今だけ頭の中で響いた、彼女が天使に見えた。

悪い……頼む。


〔ハァ……仕方ないな、紫遠は。〕


そうして影に包まれる。

目の前の瑠姫の目が完全に開いていた気がするが気のせいだろう。

うん、大丈夫な筈。それに俺は後ろを向いていた。

ならば俺だと断定できないはず!ヨシ!


そうして俺は別の物陰に移動する。

さぁ……このまま休むとするか……

連戦のせいだろうか、瞼がめちゃ重かった。

俺はそのまま睡魔に身を任せた。





いつの間に、こんな場所にいたのかな。


「……んぁ……」


起きたばっかりなのに全身がすごく痛い。

どうしてかな?スタートと開始に20人くらい倒してそのまま寝ていたのに。

もし襲われていたのなら七伝論の私が気付かない筈がないのに。

……寝る場所が悪かったのかな?


「!?」


目の前で誰かが慌ててる。もしかして、この痛みはこの人のせい……?

目がだんだんこの霧に慣れてくる。目の前の人はもう移動をしようとしているけど、見ることくらいは出来る筈。


「……君、だったんだね。あの時、何かを感じたんだ。」


もう彼は移動していてその声は届かなかっただろう。

しかし、私はそれでも良かった。

どうせまた会えるからね。


「えへ……今度は正面から叩き潰すから、覚悟しといてね~……♪」


体はまだ動かないから、口角を上げるだけにしておこう。



そうして、テストが終了した。

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