落ちこぼれ
結局、俺とあの少女……紅芽ガチファンとでも名付けておこうか。ソイツとの戦闘は俺の価値で幕を閉じた。
しかし、その勝利から周りの目が少し変わったような……?
わざわざ目の前まで来て覗き込んでくる謎の奴も居たしな。
少し、聞き耳を立ててみようか。
「まさか……あの噂の無能が勝つなんて……」
「んなわけねぇだろ。どうせイカサマでも使ったんだろ。」
そんな言葉が聞こる。
何だ?そんなに変か?
ただ落ちこぼれが実力を隠していて、それを出しただけだろ?
いやまあ、隠していたつもりは一切ないんだが。
ただ少し、居心地が悪いのも事実だ。
そうして俺は逃げるように屋上へ足を運ぶのだった。
「意外と屋上も悪くねぇな……」
屋上と言えば、なろう主人公が主人公ならば何かしらの出会い系出来事が起こるというイメージしかなく、前世からなんやかんやで屋上には行かないようにしていた。
でも、いざ来てみたら心も落ち着くし目線を気にせず居れることに気が付いた。
――これが、食わず嫌いってことか。
言葉の意味を再認識できた。これだけで十分屋上に来た意味があった。
因みにその後何かあるわけでもなく、教頭にバレて職員室ルートだった。
そうして、学園長からの話を聞く。
この学園には所謂ランク制度……というのは無く、所詮は強い異能力者を育てるためだけの学校のため、学年間による上下関係もそこまでない。
……まぁ、実力間による上下関係はだいぶ激しいみたいだけど……
「しかしまぁ、この話なげーな……」
しかし、バックレる訳にはいかない。
例年通りであればアレがある筈だからだ。
「さぁ……それでは、抜き打ちテストを行います。勿論、これで基準点に辿り着かなかった生徒は問答無用で退学としますよ?」
会場が一部ざわめく。まぁ、俺もクロから聞かなかったら同じ反応をしていただろう。
これが、事前準備がいらなかった理由だ。
このテストで過半数の生徒、弱者や覚悟の無いものが蹴落とされるからだ。
「内容はいたって簡単。貴方たちに最初に配った学生証の中には一つのバッチが入っています。」
「そのバッチは一つ10点分の価値があります。そうして、私の終了の合図がなった時、200点以上獲得していたら、合格です。」
その内容に、一人の取り巻きが声を荒げる。
「ふ……ふざけるな!そんなテストで何人が生き残ると思っているんだ!」
そうだそうだ、と騒ぎ出す。
しかし、だ。この学園は『優秀な卒業者を出しているだけ』なのだ。
それが何を意味するか分かるか?
そうして、その学園長は本当に不思議そうに小首を傾げながら言った。
「……この学園は、青春などをする場所では無いのですよ?必要なのは、本当に強いモノのみ。」
その言葉に多くの生徒が戦慄する。
「反論が無くなったようなので……テストを始めます。期限は今日の18時まで。私が適当の場所に移動させます。移動された時点でテストが始まります。」
今の時間は14時。つまりは短期決戦を求められるわけだ。
そこまで言った学園長は手を広げて――
「それではくれぐれも、死なないように。」
景色が変わる。目の前には森が広がっており、不思議な霧が漂っていた。
さて、取り敢えずは今回のテストでの計画を軽く考えてみよう。
まぁ、今回はとっても楽だろう……と俺は高をくくっている。
が、計画を立てておいて損は無い。
まずは戦闘をあまりしない。目立ちたくないが、不合格にはなりたくない。
故に、最低限度の生徒だけを倒す。19人を倒すだけの簡単なお仕事だ。
……勢いあまって殺さないようにしなきゃな。
「……いたぞ!」
俺を無能だと信じてやまない奴らが俺を囲む。
だから楽だ、と言ったのだ。相手が俺だと知れば慢心し本気を出さない。更には俺はまだクロの力しか使っていない。つまり、本気を出していないのは俺も同じなのだ。
なので、少しばかり俺の『異能』を使おう。
久しぶりの感覚だ。忘れていた全能感を思い出す。
「ふぅ……こんなものかな?」
目の前には生徒の山。少しとはいえ、俺の異能を使った時点で俺が負ける訳ないんだよね。
「さて、バッチを頂くとするか。」
そうして、集計した結果は――
「180ポイント……俺のを含めたらあと一つ……」
うん。一個足りなかった。
何でだ。俺はそういう星の下でしか生きられないのか?
「いや~なんでこうなるかな……まぁでも時間はまだあるから、いいか。」
確認してみると、始まってまだ5分ほどしか経っていなかった。
なら、今後の方向性が決まったな。
「俺は……」
「もう休む!」
俺はすでにとっても疲れている。眠くて眠くて仕方ないのだ。
っじゃ、少し目を閉じようか。
……そう、したかったんだけどな………
目の前で爆発が起こる。そこには見覚えのある顔があった。
「……あら?人の気配が沢山したから来てみたのに……こんな冴えない男一人だなんて。」
目の前の少女――肉体的にはもう子供ではない――はそう言う。
しかし、だ。面倒臭いことに俺はコイツを知っている。いや、この国に居るなら一度は聞いたことがある筈だ。
何せあの『七伝論』に並ぶと噂されていたからだ。
「冴えないだなんて……失礼だな。一応、俺らは初対面だろ?」
「そんなことはどうだっていいわ。さっさと始めましょう?貴方だって、殺されたくないでしょう?」
そんな『断罪者』こと、『瑠姫』は、一切言い淀むことなくそう答えた。




