入学、そして‥‥‥
………あれから時間が経ち、15歳になった。
そんなこんなで異能を取り戻した俺は来年、異能力者学園と言うものに行かなくては行けないらしい。
この学園は他の異能力者学園と比べても、より優秀な卒業者を出しているとして有名だ。
そんな注目の的の学園に行くなんて……と自分の運の無さを恨んだ。元社会不適合者からしたらだいぶキツいことなのだから。
だいぶ軽めの社会復帰と考えるならまだマシか。
ただやっぱり、そうだな。
「‥‥久々すぎてなんか、ハズイな。」
そうなのだ。前世では殺人鬼として過ごしていた身だ。
今更普通に学生として過ごせ、という方が難しくないか?
よし決めた。サボろう。
そうして、俺は入学初日からサボることが――
「さっさと行けボケナス!」
――出来なかった。
そして、母に家を追い出される形で学校に向かう。
…俺の家は何故こうも女性が強いのだろうか。
それはそうと、ハァ、何で俺が学校なんかに……
しかし、こんなことを何時までも言っていても仕方がない。
ようやく、俺はその学園の門に立つ。
因みにだけど、この学園には入学の為の事前準備等は何も無い。
何故か?それは追々分かる筈だ。
さて、教室に辿り着く。
俺は、持ってきた荷物を机に置く。そして、周りを見渡す。
そこには、情報が全くと言って良い程入ってこない俺ですら知っている有名人や、明らかに強そうな奴など沢山居た。
そんな中、周りよりも華奢な女の子が話しかけてきた。
……これはセクハラに当たるのか?
「ねぇ、貴方が噂の人?」
……俺、噂されているのか?
いやいや、もしかしたら人違いという可能性も――
「貴方が、紫遠さんだよね?」
どうやら俺で間違いないようだ。
俺は…何かしてしまったのだろうか。
それが良いものなのか、悪いものなのかによって、俺の今後は大きく変えるだろう。
俺だって一人の人間である。あんまりに酷い目線などには耐えられないだろう。
しかし、その女の子から次に発せられた言葉は俺には想像がつかないものだった。
「貴方は……あの紅芽様のお兄さん、なんですか?」
……と、目の前の少女は少し頬を赤らめながらそう呟いた。
しかし、だ。そう考えるならば色々と合点がいく。
紅芽はその異能の力があまりに強大だったせいで、この現代社会じゃ殆どの人間が知っている程だ。
その異能とは、『未来創造』。自分の未来だけで無く、他の人間やましてや空間にまで確定した未来を押し付ける…そんな異能。
俺はよくその妹と比べられていた。有能な妹と無能な兄。それは妹の評判が広まるごとに、俺の悪評も広がっていった。
でも俺は気にしちゃいなかった。何故なら、こんなに可愛い妹が周りから良い評判を受けているからだ。
でも、そんな俺の妹は――
何故だか、昔のことを思い出してしまった。
少しの時間だった筈だが、その少女は困惑した表情をしていた。
「……ん、あぁ……ごめん、少し考え事をしてた。」
「そうだよ。俺が、紅芽の兄だ。」
俺は一切の淀み無く、そう言った。
他の生徒の視線が変わる。そりゃそうだ。
有能な妹と無能な兄。そんな無能な方が堂々と宣言したのだ。
目の前の少女はやっぱりか、という表情をしていた。
「やっぱり……そうだったんですね」
そうしてその少女はまるでゴミを見るような目で、その衝撃の言葉を口にする。
「私と……戦ってください。そうして、私が勝ったら紅芽様との兄妹関係を放棄してください。」
……と。
この学園は、戦闘に関する校則が存在する。
その中の一つに、〈互いの了承があれば、如何なる死傷も許される〉というものがある。
そうして、〈勝者は敗者に絶対遵守の命令を下せる〉というルールがあるせいで、この学園では戦闘が絶えない。
……だから、この学園の卒業者が優秀なのだ。
そうして、俺は呼び出された場所に移動した。
しかし俺はその場所を見た瞬間、顔をしかめた。
その場所とは――
「……ここかよ。」
そう、校庭だったのだ。
確かにここはとても広い。動きに制限がかかる事は無いと思うが……
「何処から情報が洩れたのか全く分かりませんが……結構な人数が見に来てしまっていますね。」
俺が顔をしかめた理由が分かっただろう?
情報が洩れていたわけではない筈だ。ただ、相手が俺であったのが悪いのだ。
俺は……悪評が広まりすぎている。
「やるならさっさとやろう……視線が痛すぎる。」
目の前の少女は覚悟を決めた顔をして、
「……わかってますよ‼」
そうして、その少女は目の前にまで接近してきた。
しかし俺は口角を上げて――
「……≪絶対防御≫」
少し、昔話でもしようか。
それこそ、俺がまだこの世界に馴染んでいないときだった。
紅芽は誘拐された。目的は、知ることは無い。何故ならその犯人は跡形もなく消滅したからだ。
何故、攫ったのか。それは金輪際知ることは無い。
だって……ソイツは俺が……殺してしまったから。




