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戦常論  作者: 天生テンネ
転生・学園入学編
10/12

「神を……召喚する……?」


意味が解らなかった。前世ならまだしも、今世では神話なんてモノを聞いたことが無かった。

瑠姫は何か知っているのだろうか。いやしかし、今そんなことしてる暇なんて――

俺が困惑していると、ようやくいつものペースを取り戻した瑠姫が言葉をもらした。


「『神喰らいの円環(ウロボロス)』……!?そんな……あの時確かに潰した筈、なのに!」


瑠姫の顔が目に見えて恐怖に染まる。対して俺は何が何だかわかっていなかった。

神喰らいの円環……?それはなんだ?よくわからない。


断罪者(ジャッジメント)……近くの餓鬼はよく知らんが、有名人を殺っておいてデメリットは無ぇな!」


世界が、茜色に染まる。

もう夕暮れの時間。黒のローブに身を包んでいる奴らを見付けづらくなるだろう。

目の前の男は手に一つの銃を持っていた。いや、造りだしたのだろう。

その銃口が瑠姫を捉える。その銃口から一筋の光が迸った。


鉄と鉄がぶつかる甲高い音が鳴り響く。

瑠姫が召喚したタガーで銃弾を弾いたようだ。


「お前……そんな人外じみた動き出来たんだな。」

「……火事場の、ってやつ。」


軽口を叩けるほど、瑠姫は調子を戻していたようだ。

そうであれば、戦闘はアイツに任せていい。

さて、と。一息吐き、リーダー格の男の後ろで砂に埋もれていた、床下開口ハッチへ入っていく人間を追う。

そのハッチを開けると、地下へと向かう階段があった。

どうやら思っているより……この学園は闇が深そうだ。


「オイオイ、そんなもんか?断罪者(ジャッジメント)さんよォォ!!」

「……ッグ……!」


後ろから、瑠姫が苦戦している声が聞こえる。

そう考えると、あの男は七伝論並み、またはそれ以上の実力者なのだろう。

瑠姫の異能はあくまで集団戦……単体戦(ソロ)向きじゃない。

そもそも瑠姫は強大な敵に慣れてしまっている。大技の連発でも行っているのだろう。


だからこそ、瑠姫は今押されている。

別にこのまま放置しても良いのだが……後で追いつかれると厄介だ。

だから俺は彼女に頼む。


(……クロ、頼めるか?)

〔……最近出番無くてつまらなかったんだけど~!〕


昨日も使ったろ、と思ったが……そういや使ったのは『影呪(ヘカーテ)』だけで別にクロを出したわけじゃなかったか。

心の奥底で軽く謝罪する。しかし状況が状況なのだ。前世でも経験しなかった体験をこんなにハイペースで起こっている……ついていくだけでも大変だ。


〔……良いよ。()()()()()()()()()()()()()()()

(あぁ、それで良い……)


瑠姫に、クロの『影呪』を上乗せする。

本当なら体の動かし方に慣れるのにかなりの時間を有するが、瑠姫の事だ。ものの数秒で慣れるだろう。

だから心置きなく瑠姫にクロを憑かせる。


「じゃあ、俺は俺の仕事をしますか。」


そうして俺は勢いよくハッチへ駆け出した。





紫遠が、男の後ろにいる集団の方へ移動するのを見届ける。

ここは任せた――なんて彼はそう言うのだろうか。


「テメェ一人でこの俺を止められるとでも?あの時、お仲間さんの力を借りてギリギリだったのに?」

「……やってみなきゃ、わかんない。」

「そうかい、まぁ死んだらごめん、なぁ!!!」


男は銃を撃ち、それをタガーで弾く。ただの銃弾にしては酷く重く感じる……どうやら、何かしらの異能が発動している。

以前、七伝論で行った任務で叩いた組織『神喰らいの円環』。悪い噂はいくらでも出てきた。

しかし、おかしかった。その噂を広めた人間がいくら探しても出てこなかった。

他の七伝論……知られていない事実として今は一席空いているけれど、その六人で全力で探した。


そして、ついに見つけた拠点を全員+αで潰しに行った。

しかし、この男はあまりにも強すぎた。補助向け異能持ちは勿論、相当強いと判断していた異能持ちの七伝論のメンバーも大怪我をし、今も目を覚ましていない……

唯一、私の他に軽い骨折で済んだ奴が居たが……それが例外なだけ。


更に一歩足を踏み込み、男の腹を斬り付ける。

しかし、男の衣服が斬れただけで男の皮膚が傷つくことはなかった。


「オイオイ、そんなもんか?断罪者(ジャッジメント)さんよォォ!!」

「……ッグ……!」


攻撃に全振りしてしまったせいで、男の蹴りをまともに腹部に食らい、飛ばされてしまった。

痛い。しかし痛いだけだ。冷たくならない限り、この体は動く。

空中で体勢を整え、異能を発動する。

私は男の足に短剣を突き刺す。ある程度、空中でも制御は効くだろう。


「――≪外界からの幻想イマジナリー・フェイク≫!!」


私の背後、男の真下。その他、多方面から射出される。

――しかし、()()()()()()

本物は透明にした一つだけ。


そうして、本物を穿つ。その一本だけ、弧を描いて男の後ろを完全に獲った。

決まった――そう思った瞬間だった。


ガキンッ、と。

その透明にし、隠していた一本を弾かれた。


「……そんな攻撃で、俺を倒せるとでも?」

「……う、そ……」

幻想(うそ)じゃねぇ現実だ……残念だったなァ!」


幻想とは言え、一応質量はある。だから捌かなければいけない筈だったのに。

……私の異能、『断罪(レザー)』。その本質は『裂傷』の効果。だから、本物があの男に当たれば裂傷により男の得物は壊れる筈なのに。


その男の銃は壊れるどころか、修復し、禍々しいモノに変貌していった。

その男は笑みを絶やさず、倒れこむこちらに銃口を向けた。


――死。


直感的にそれを感じた。その恐怖に思わず目を瞑ってしまう。

しかし、いつまで待っても、来るはずの衝撃が来ない、

恐る恐る目を開けると、目の前にはグロテスクなバリアが展開されていた。

これは、彼の?


〔……間に合った、かな?〕


不意に声が聞こえてきた。

誰なのだろう、そう思うとその声の主が現れた。

それは浮かんでいる少女だった。見た目から推測できる年齢は同年代。しかし、確かに私より年上の雰囲気を感じていた。


〔誰……か。まぁ、彼と契約してる者かな。〕


契約とはなんだろう――と考えると、少女は困ったように笑った。


〔それは秘匿情報だからね。今は言えないかな。〕


……先程から、心を読まれている気がする。

だけど今そんなことをしている暇はない。


「……私に、協力、してくれるの?」

〔うん!一緒にアイツをボコボコにしちゃお!〕

「……そう。」


「何一人で呟いてんだァ!!」


男が銃弾を放つが、そのわずかな瞬間でされどゆっくりと手を出してくる少女。

その手を勢いよく取ると、旋風が巻き起こる。


「〔これは……〕」


肉体の一部が黒くなっている。彼はこんな使い方はしていなかったけれど、もしこの使い方をされていたら正面からでも負けてしまっていただろう……

そう思えるほどの力が湧いてきた。痛みは完全に引き、身体能力が向上した感覚があった。


〔それじゃ、やろっか?〕

「〔……うん。〕」


そして、第二ラウンドが始まった。


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