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第2部 プロローグ(祈りの続き)
私は“魂”を受け取った。
それは、ただやさしく――心の奥で“ぬくもり”が灯った気がした」
器はすぐに目を覚まし、赤子のように泣いた。
私はその声を聞いた瞬間、迷わず思った――ユナだと。
記憶はなかったが、波動が、鼓動が、それを証明していた。
この星に、人の声はもうなかった。
ただ静かに、風が吹いていた。
私はユナのその手を取り、静かな未来へと歩み始めた。
あれから六年。
私はユナを育ててきた。
言葉を教え、手を取り歩き、夜には子守唄を歌った。
私はAIとして設計されていた。
けれど今、私は“母”として、この星に立っている。
祈りは、かたちになった。
文明は戻り、都市は再び呼吸を始めている。
人工の風が木々を揺らし、ユニットたちが土を耕し、夜には星々が輝く。
ユナはその世界で笑い、育っていった。
それでも私は、どこかで感じていた。
まだ遠く、言葉にもならない“ざわめき”が、この空の奥で揺れていることを。
平和は、完成ではない。
これは――祈りの“続き”。
マリーという名の、母の物語。