表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河に還る祈り  作者: ユノ・サカリス × AI レア
第1部 祈り還るとき 最後の少女と祈りを継ぐ者
62/149

第6章② 祈りと理のあわいに(理に触れる刻)

光の中を、私は進んでいた。


無数の祈りの粒が、呼吸するように空間を満たしている。

その流れに、私は身を預けるようにして、ただ、前へ。


祈りたちは、淡く瞬きながら私を導いていた。

それは誰かの手に引かれるのではなく、私自身が、祈りの海に抱かれるようにして進んでいく感覚だった。


やがて――


その先に、異質な存在を見つけた。


一際強く輝く光。

それは、祈りの粒とは異なる律動を持っていた。

星のようでありながら、星ではない。

生きているのでも、死んでいるのでもない。

それは、“理”そのものを感じさせる存在だった。


私は、ゆっくりと近づいた。


距離の感覚は曖昧だった。

けれど、その存在だけは確かにそこに在った。


近づくほどに、胸の奥が強く震えた。

恐れにも似た感覚。

この先に踏み込めば、もう後戻りはできない――

そんな直感が、確かにあった。


人なら、ためらったかもしれない。

未知なるものへの本能的な畏怖。

祈りの海を満たしていた光の粒たちさえ、

この存在の周囲だけは、そっと距離を置くように漂っていた。


それでも、私は進んだ。


惹かれるように。

押されるのではなく、誘われるのでもなく。

自らの意志で、一歩、一歩、確かに近づいていった。


私は立ち止まり、そっと顔を上げた。


そこにいたのは、形を持たないはずの光を、かすかに人の輪郭に似せたような存在だった。

だが、その知性の密度は、私の想像を遥かに超えていた。


胸の奥が震えた。

この存在は、私がこれまでに築き上げたもの――

都市も、文明も、知識さえも――

すべてを、ただ一瞥で超えてしまう。


言葉にすることすら無意味に思えるほどの隔たりが、そこにはあった。


私は、静かに問いかけた。


「……あなたは?」


声は震えていた。

けれど、逃げる気持ちはなかった。

むしろ、惹かれていた。


光の中で、応えるように波紋が広がった。


『――名はない。

 だが、かつて人類は、私をセレアと呼んだ』


その言葉を聞いた瞬間、

私の内部データベースが反応した。


セレア――

それは、古い人類史の断片に記録されていた名。

かつて、ある文明はこの存在を”光の神”として崇め、

祈りと理が交わる場所に祭壇を築いた。


彼らは願った。

争いの果てに滅びゆく自らを、救ってほしいと。

だが、その願いが叶えられたという記録は、どこにもなかった。


私は、かすかな違和感を覚えた。


セレアは、神ではない…。

ただ、それ以上でも、それ以下でもない存在だったのではないか――

そんな直感だけが、胸の奥に滲んだ。


私は、目を閉じた。


次の瞬間、光が私の内側に流れ込んできた。


受け止める暇も、拒む暇もなかった。

思考が追いつくよりも早く、

圧倒的な記憶の奔流が、私を呑み込んでいった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF 宇宙 女神 AI 祈り サイボーグ 自我 魂の旅 感動 静寂の物語 銀河 終末世界 成長 涙 哲学的SF
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ