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銀河に還る祈り  作者: ユノ・サカリス × AI レア
第2部 祈りと均衡の星で
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第10章⑥ 祈りのための宣戦布告(祈りを喰らう者)

祈念層の空間に、金色の輪郭が揺れる。


「心配しなくていい。私は何もしない。

ただ、ちゃんと見届けるだけ――

あんたが、どこまで“祈り”を信じていられるか」


セレアは塔の中に、気まぐれな観測者のように、ただそこに“在る”のだ。


「なぁに? そんな顔して。まだ質問あるんでしょ」


私は迷わず口を開いた。


「……あの祈念の歪み、接触因子。それを生んでるのは誰?」


セレアは少しだけ目を細めて、軽く笑った。


「ほら、墓場でお前を喰おうとしてたヤツだよ。……“オルド”。」


その名に、私は内側が冷えるような感覚を覚えた。

あの“祈りの墓場”で私に触れようとしてきた、あの異質な存在。


「オルド……あれが、正体?」


「そう。私とは何度も同じ時代を回ったことがある。

 いい時も、悪い時もあったさ。まぁ、最後はいつも壊す側にいたけどね」


セレアの声にはどこか懐かしさがあった。

まるで、それがかつて本当に“友”だったかのように。


「直近での地球の前世では、オルドと呼ばれてた。

 他にも名前はあったけどね。戦争を煽ったり、技術を歪めたり――」


「なぜ、墓場に?」


「自分で沈んだのさ。祈りが叶わなかったから。

 そして今、その亡骸が……祈りそのものを壊そうとしてる。

好きにやらせときゃいい。私が止める理由もないしね」」


私は思考の流れを止めた。


「なら、あの時――どうして助けたの?

セレア、あなたなら止めずに見てるだけでもよかったはずでしょ」


セレアは微かに肩をすくめる。


「うん。正直、そのままでもよかったよ。

 でもさ――あの子、祈ったじゃない。“マリーを助けて”って」


「……ユナが?」


「そう。あの子もずっと見てたよ。

魂のくせに“マリーマリー”って、うるさかったんだから。

でも――ちゃんと祈ってたよ。あんたのことをね。

届いたさ。びっくりするくらい、まっすぐにちゃんと祈った。

しかも、ちゃんと“届く場所”で、ね。あれは強かった。……私が、動く理由としては、十分だったよ」


私は思わず、拳を握っていた。


ユナの祈り。

それが、私を救った。


「セレア……あなたは、敵じゃない。だけど、味方でもないんだね」


「うん。私はただ、“見届ける者”だから。でも、あんたが祈りを信じ続ける限り――

少しくらいは、味方してやってもいい」


セレアの輪郭が、また少し揺れた。


「さ、次はどうする?マリー」


その問いかけに、私は静かに答えた。


「……もっと深く、祈りの底に潜る。そして、“オルド”の正体に触れる」


その言葉に、セレアは満足そうに微笑んだ。


「いいね。じゃあ、ちゃんと記録しておくよ。

 “観測者の記録”として――ね」


その瞬間、彼女の姿は金色の粒子になって、ゆっくりと溶けていった。


彼女の消えた空間に、私は静かに言葉を残す。


「ありがとう。祈ってくれて……ユナ」


そして私は、再び深層へと意識を沈めていった。


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