~僕と男だらけのお茶会~
僕たちは、先日訪れたサーディンの行きつけの店に座った。
ここは運よく襲撃を免れたらしい。
「まあ、その…シキ! 元気出しなよ! ねっ!?」
「いつまでも落ちこんでもしょうがないだろ…なあ、ハナビート?」
「そうそう、流水は腐らないってね!ずっと同じ場所にいると、ダメになるんだよ。水も人間も」
「あ、ああ…そうだね……」
「重症だ、こりゃ………」
サーディンとハナビートは、さっきから必死でシキさんを慰めている。
その甲斐あってか、彼は少しずつ元気を取り戻した。
僕も必死に話題をつくった。
「そういえば…国王陛下って女の人なんだね」
「意外だったのか?」
「正直言うと、意外だったかな。僕は国の代表って、男ってイメージだったから」
「そうだな…レイジ。それはちょっと違うな。大事なのは、男とか女とかじゃなくて… 適性や器があるかどうか、なんだと思うよ。国をまとめるというのは、大変なことなんだ。誤った判断というのは、民衆の反感を買い、その結果として命を狙われることになるからね」
「うん。なんとなくわかるよ、ハナビート…」
「言い換えれば…適性や才能、カリスマを備えた人間なら…僕は、組織の代表は女性でも子どもでもかまわないかな。2人も僕と概ね同意見だろう?」
「そう…だね…」
「まぁな」
(おっ、シキさんが話に入ってきたぞ…!)
「ただ、ランディアンもそこまで愚かではないハズだ。長い歴史の中で、男がトップであることが多かったのなら…そこにはなにか理由があるはずだ。それが間違った判断ならばランディアンなんてとっくの昔に滅びていただろうね」
「男とか女とかじゃなくて、そのうちAIが人を支配する世界がくるのかなぁ…」
「そうだね、AIの発展はめざましいからね…しかし!!」
いきなりシキさんが、力強く話しはじめた。
「昨今はAIの知能が人間を越えて、シンギュラリティが訪れるだろう、と言われているがね…AIは人の想い、思想、価値観、生命倫理までは簡単には習得できんよ。できたとしても、もう少し先の未来だ」
「おっ、元気になったかい? シキ!」
「やっぱ、おめぇはよ!ウンチクたれているときが一番輝いているな!」
バン!
シキさんがおおきくテーブルをたたく!!
「そうだ! AIに負けてなどいられん!!」
(急に元気になったな、シキさん…でも、よかった)
「ちなみにオルテンシアでは、才能さえあれば、10歳から統治者になれる」
「え? ホント?」
「才能さへあればな。大変だぞぉ。なんていったって…」
サーディンの言葉を遮るように、店長が話しかけてきた。
おばちゃんは声が震えていた。
「サーディン…」
「どしたよ? 店長?」
「私たちはセメタリーパークに行ってくるよ…」
「ああ、そうか…。すまねぇな、店長」
サーディンは表情を観て、察したようだった。
「店長失格だねぇ…。客のまえで泣いちまうなんて…」
「悲しいことがあるのに、泣かねぇヤツの方が人間失格だろ?」
サーディンは店長の顔を見ないで言った。
「ああ…ああ…」
泣き崩れそうな店長をサーディンは無言で支える。
「僕らも行かなきゃ。セメタリーパークに…」